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すがやみつるの漫画家・夢の工房

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プロフィール:すがやみつる
1950年9月20日、静岡県富士市生まれ。1972年『仮面ライダー』(原作・石ノ森章太郎)でデビュー。『ゲームセンターあらし』など少年漫画で人気を博す。近年は娯楽小説家として活動し架空戦記シリーズやユーモアミステリーを執筆。2009年に早稲田大学人間科学部を卒業し、今春、大学院に進学。
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コラム 2009/10/03
第10回 『つるピカハゲ丸』誕生秘話!


『ゲームセンターあらし』に学んだ『とどろけ!一番』のあのポーズ

 ――前回は、79年のデビュー作『ケンカばんばん』が、いきなり連載になったところまででしたが、人気はどうだったんですか?

のむら「それがさっぱりで……6回で打ち切りになったんですよ。それで1ヶ月おいて、80年の『コロコロコミック』2月号から『とどろけ!一番』の連載がはじまったんです。すがやさんのところでお手伝いをしたのも、あのころですよ」

 ――あ、『ゲームセンターあらし』の100ページ読み切りでしたっけ?

のむら「そうです。ながいのりあきさんも一緒に。仕事の合間に、ご飯食べに連れてってもらったり、本屋に行ったり。すがやさん、本屋で、発売になったばかりの『あらし』のコミックスを、目立つ場所に置き換えたりしてたんですよ」

 ――そんなことありましたっけ?(笑)

のむら「ああ、自分に都合の悪いことは、すぐ忘れるんだから。ありましたよ(きっぱり)。それは別としても、すがやさんが石ノ森(章太郎)先生や作家の柴田錬三郎先生から学んだことを教えてもらったりして、とても勉強になりました」

 ――そう言ってもらえると、こちらも救われます(笑)。

のむら「そうそう、『とどろけ!一番』がはじまったころ、ぼくの担当だった平山(隆)さんと、『あらし』の担当者の武田(仁)さんと、3人で食事をする機会があったんですよ。そのとき平山さんが、『あらし』に追いつけ追い越せと励ましてくれたんですが、そうしたら武田さんが、『無理無理。逆立ちしたって追いつけないよ』なんて言うんですよ」

 ――そんなひどいこと言ったの?

のむら「ガックリ落ち込んでいたら、平山さんが新宿のビアホールに誘ってくれて『のむらさん。映画の黒澤明監督が口癖のように言ってた言葉を知ってる? ネクスト・ワンって言うんだよ』と激励してくれましてね。あの平山さんのフォローがなかったら、落ち込んで、心身症になるところでしたよ」

 ――武田さんが、そんなひどいこと言うなんて、信じられないけど。

のむら「一応フォローしときますけど、あれ、武田さん流の愛のムチだったんですね。そのあと『あらし』のコミックスが出たら、武田さん、ぼくに2冊くれたんですよ。1冊は保存用。もう1冊は勉強用だからボロボロになるまで読みまくるようにって。平山さんにも言われていたんで、『一番』では『あらし』を必死に真似ました。いまだったら2ちゃんねるで叩かれちゃいますけど、一番が逆立ちして答案返しをやるのだって、みんな『あらし』のパクリでしたから。あ、そうだ。そもそも『あらし』がゲームをするのに逆立ちしているのをパクったんですが、あれ、どこでヒントを得たんですか?」

 ――『あらし』の1回目を描くときに、平山さんに言われたからですよ。「最後にゲームを決めて勝利するときには、必ず主人公を逆立ちさせてくれ」って。こっちは、そんなウソっぽいのイヤだって抵抗したんですけど、その直前に「コロコロ」で描いたSF漫画が「いい子ちゃん漫画」で面白くなかったそうで、「『仮面ライダー』や『(人造人間)キカイダー』では、あれだけメチャクチャやっていたんだから、できるでしょ」と言われたんですよね。

のむら「すがやさんも、そんなこと言われてたんですか」

 ――小学館で最初に描いたのが「小学一年生」に連載した『人造人間キカイダー』だったんだけど、これが学習誌にはハデすぎると問題になったんです。結果的にはOKになったんですが、平山さんも、そのころのことを憶えていたのかもしれませんね。

のむら「あの『あらし』のハデな動きは、どうやって考えたんですか?」

 ――「コロコロ」の平山さんに言われたとおりに『仮面ライダー』を思い出しながら描きました。ぼくは石森プロで『仮面ライダー』を描いていたんですが、『1号』『2号』のときは石ノ森先生のオリジナル漫画があったので、アクション・シーンなども先生の絵を真似られたんですけど、『V3』は先生が漫画を描かなかったので、お手本がなくなって……。しかたがないので、神保町の古書店でアメコミの古雑誌を買ってきて、アクションシーンや構図の参考にしたんです。『あらし』も、その延長ですね。突き出した手が極端に大きくなったりするのも、『スパイダーマン』や『キャプテン・アメリカ』や『ハルク』なんかの真似です。ただ、基本的なデッサン力がなかったので、アメコミを真似ていることに気づかれませんでしたけど(笑)。

のむら「なるほど。参考になるなあ」

 ――あの、インタビュアーは、こっちなんですけど……(汗)。

●机まわりには何が?仕事場チェック!
ハッピーしんちゃんつるピカハゲ丸
右は新作『つるピカハゲ丸』の原稿。左は仏教系雑誌に長年連載している4コマ漫画のネーム。1本の4コマ漫画のために、その数倍のネームをつくる

つるピカハゲ丸つるピカハゲ丸年賀状
檄文檄文
仕事場の壁には、『ハゲ丸』のセル画や年賀状用のカラーイラストのほか、自分を励ます標語や格言がいっぱい。どこを向いても、やる気が出る仕組みになっている


『とどろけ!一番』路線変更で2倍以上のファンレター殺到

 ――『とどろけ!一番』は、過激な勉強漫画として人気がありましたけど、途中でボクシング漫画になりましたよね。

のむら「そうなんです。担当者が入社早々の若い人に変わったんですが、そうしたら、いきなり渋谷のボクシングジムに連れていかれて、トレーニングを体験させられたんです。練習生にボコボコにされましてね。そんな苦労を伴いながら取材をして描いたら、ファンレターの数が、いきなり2倍になりました」

 ――おお、路線変更が成功したんですね。

のむら「そうじゃないんですよ。大半が路線変更に抗議するもので、カミソリの刃こそ入っていませんでしたが、鉛筆削りの削りカスとか消しゴムのカスが入っていたりで、がっくりと落ち込みました。この路線変更が悪かったのか、人気も急降下して、すぐに連載も終了。そのあとに起こした連載も、いい結果が出なくて、『もう、のむらはダメじゃないか』なんて声も出ていたみたいなんです。そんなときに、すでにデスクか副編集長になって漫画の担当は持っていなかった平山さんが、ぼくの担当を買って出てくれたんです」

 ――平山さんは、どんなアドバイスを?

のむら「『もう後がないんだから、思いきった路線変更をしよう』と言われて、4コマ漫画を提案されたんです」

 ――おお、それが『つるピカハゲ丸』?

 のむら「はい。『ハゲ丸』がアニメにもなったり、小学館漫画賞ももらったりで、本当に、人のつながりあればこその漫画家だと思っています」

 ――最近は、どんな仕事を?

のむら「雑誌の仕事をこなしながら、習い覚えた中国語の入門漫画を描きたいと思って、コンテまでつくったんですけどね」

 ――これからは中国の時代だし、目を留めてくれる出版社があるといいですね。

のむら「はい、ホントに」   (おわり)




 

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