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すがやみつるの漫画家・夢の工房

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プロフィール:すがやみつる
1950年9月20日、静岡県富士市生まれ。1972年『仮面ライダー』(原作・石ノ森章太郎)でデビュー。『ゲームセンターあらし』など少年漫画で人気を博す。近年は娯楽小説家として活動し架空戦記シリーズやユーモアミステリーを執筆。2009年に早稲田大学人間科学部を卒業し、今春、大学院に進学。
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コラム 2009/10/31
第12回 少年漫画に挫折…… 37歳で大人漫画に転身
ネオン街漫画家・岩田和久


 ――前回、児童漫画でデビューしたのはいいけれど、ヒット作に恵まれず、ついに少年漫画を断念して、大人漫画に転身するまでの話を聞いたんだけど、この転機となったあたりのことを、もう少し詳しく教えてもらえないかな?

岩田「いいですよ。児童誌での仕事が思わしくなくて、だんだん仕事が減ってきたもので、思いきって集英社の新人賞に応募したりしてたんです。37歳のときでした。新人賞に応募するだけじゃ食べられないんで、同時に、あちこちに『仕事ください』と言って歩いていたんです。そうしたらパチンコ雑誌や釣り雑誌から仕事がもらえて、なんとか食いつなぐことができました」

 ――そして「ヤングキング」で連載したりして……。でも、青年誌向けの漫画といっても、最初のうちは、あまりアダルトっぽくはなかったんだよね?

岩田「そうです。少年漫画の出身のせいか、女性の裸とか男女の絡みのシーンを描くのに抵抗があって、その手の仕事の依頼は来ていたんですが、のらりくらりと逃げてたんですよね」

 ――でも、ついに引き受けた……。

岩田「生活のこともありましたし、プロとして生きていくためには、やはり、ある程度の覚悟は必要だと思って」

 ――それで倉科遼氏の原作作品も?

岩田「そうです。1999年から芳文社の、『週刊漫画TIMES〈増刊〉』に『女衒(ぜげん)』を連載させてもらったんですが、すごく勉強になりました」

 ――やっぱり最初は苦労した?

岩田「最初だけじゃなくて、いまも苦労してますけど、やはり艶っぽい女性を描くのが大変で……、資料も持っていなかったもので、資料集めに手間と時間がかかりました」

 ――資料というと?

岩田「女性のヌード写真集とかランジェリーのカタログといったものですね。色っぽいポーズのとり方とか、口紅を塗った唇の表現とか。どうしたら肉感的な女性が描けるか、あれこれ研究して、練習しました。倉科先生の原作作品を描いていた他の漫画家の方々の絵も、よく参考にさせてもらいましたね」

 ――『女衒』がコミックスになったのは、2000年くらいから?

岩田「そうです。全5巻が出ています。イーブック・ジャパンでも読むことができますよ(笑)。2003年にはVシネマにもなりました」

●岩田さんの仕事場チェック
岩田さんの机
トレス台の前には液晶テレビ。右にある鏡は表情の研究用。整然としていて漫画家の机とは思えない

岩田さんの本棚『花守人』カラー原稿
やはり漫画家のものとは思えない資料の書庫。きっちりした性格があらわれているMacの画面に表示された『花守人』(監修・池坊専永/日本華道社・刊)のカラー原稿

イラストすがやみつるの机
こちらはすがやみつるの机…ヒドイ(汗)


アシスタント道は漫画家道に通じているか?

 ――『女衒』も回が進むにつれて、絵が緻密になっているよね。書き込みが増えて。

岩田「白い画面が好きだったんですけど、ネオン街ものを描いている方の多くが劇画系で、細かく描き込んでいる作品が多いんですよね。それでぼくも、斜線の掛け合わせやトーンを多く使うよう心がけました」

 ――うちのアシスタントだったころからきれいな絵を描いていたけれど、みんな独学?

岩田「構図の取り方なんかは、先生が教えてくれたじゃないですか。奥行きのある構図の取り方とか、斜線の掛け合わせなんかも手本を見せてくれて、それを真似したんですけど」

 ――そんなことあった? やばいな、記憶が飛んでる(苦笑)。確かに劇画家の江波じょうじ先生のアシスタントをしていたころは、宮谷一彦タッチの絵を真似て、写真みたいな絵を描いていた記憶はあるけど……。

岩田「『バックだけ描けても漫画家にはなれない』ってのが先生の口癖でしたよ。『専業アシスタントになるな』とも言って、2年くらいでアシスタントを独立させてましたから」

 ――そんなことも言ってたね、確かに。でもあれは、ジョージ秋山先生の影響が大きいんだよね。

岩田「ジョージ秋山先生のアシスタントもしてたんですよね?」

 ――1970年のことだから、もう39年も前だけどね。『銭ゲバ』や『アシュラ』が始まって超多忙になっていた秋山先生から助っ人を頼まれたことがあって、そのとき見本に、劇画のアシスタント時代に描いた原稿を持っていったんだよね。宮谷一彦タッチのリアルな絵だったんだけど、それを見た秋山先生が、ぼくが描いた登場人物の絵を指して、「なんで腕が肩から出てるの? これじゃ当たり前すぎてつまらないじゃないか。腕が脇腹から出てたらまずいの?」なんて言い出すんだよね。アシスタントの話もダメかと思って帰ろうとしたら、「いや、絵は完璧だから、いまから手伝ってくれ」なんて言われてさ。少し待たされている間に、秋山先生がギャグ漫画の原稿の人物の顔にだけペンを入れて、それを渡されたんだよね。明日の朝までに仕上げて来てくれって。

岩田「身体やバックのペン入れも?」

 ――そう。ペンタッチを真似るのは得意だったんだよね。その後も週に1本ずつ『デロリンマン』とか『ざんこくベビー』なんかを手伝ったんだけど、この仕事のおかげで「漫画の面白さと絵の技術は別モノだ」ということに気づかされたような気がして、劇画的な絵を描くのをやめたんだよね。

岩田「そのあたりの感覚が『ゲームセンターあらし』につながってるんですかね?」

 ――そうかもしれないね。ところで、岩田君はパソコンを使ったのも早かったよね。

岩田「Macを使い出してから10年以上になりますね。いまも人物までは紙にペンで描いてますが、背景との組み合わせや仕上げはMacの画面でやってます」

 ――ソフトは?

岩田「Photoshopがほとんどですね」

 ――カラーもMacで。

岩田「そうです。こんな漫画も描いてるんですよ(と華道漫画『花守人』の原稿を開く)」
 ――この漫画もいいよね。キャラはギャグタッチだけど出てくる花がリアルで、学習漫画に最適だよね。大人向けと並行に、こっちの仕事も増やしたら?

岩田「よかったら紹介してください(笑)」

 ――最近は、こんな学習漫画系とネオン街系の2本立て?

岩田「そうですね。大人向けだと、コンビニ用のマンガ雑誌のほかに、最近はケータイ漫画の仕事が増えてます」

 ――ケータイ向けはカラー?

岩田「そうです。もとはモノクロだった原稿に着色することも多いですね」

 ――このあいだ、ある学会の大会に出かけたら、ケータイ小説と普通の小説の読まれ方の違いを分析した研究があったけれど、ケータイ漫画についても、そろそろ同じような研究が必要そうな気がするね。

岩田「だったら大学院生をしている先生が研究をすればいいじゃないですか(笑)」

 ――うう……真剣に考えてみよう(汗)。

(次回は、2010年1月更新予定です)




女衒
『女衒』
作:倉科遼 画:岩田和久 各315円(税込)

女を喰いものにするヤツは、風俗業界に手をだすな! 女を労り、かわいがるのが女衒の鉄則だ……。今日もまた川崎は愛と優しさで女たちを守り続ける!
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