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まんがのしくみ

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プロフィール:中野晴行(なかの・はるゆき)
1954年生まれ。和歌山大学経済学部卒業。 7年間の銀行員生活の後、大阪で個人事務所を設立、フリーの編集者・ライターとなる。 1997年より仕事場を東京に移す。
著書に『手塚治虫と路地裏のマンガたち』『球団消滅』『謎のマンガ家・酒井七馬伝』、編著に『ブラックジャック語録』など。『マンガ産業論』で日本出版学会賞奨励賞、日本児童文学学会奨励賞を、2008年には『謎のマンガ家・酒井七馬伝』で第37回日本漫画家協会賞特別賞を受賞。2009年、「まんがのしくみ」連載を電子書籍化した『まんが王国の興亡 ―なぜ大手まんが誌は休刊し続けるのか―』をリリースしたのちに、『マンガ進化論』と改題して書籍出版。

まんが王国の興亡

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コラム 2009/12/02
第42回 「ベルばら」「テニミュ」から見えるまんがと舞台の関係


 先日、日比谷の東京宝塚劇場で、宝塚歌劇花組公演『外伝ベルサイユのばら アンドレ編』を観た。
 
 宝塚歌劇団が、池田理代子の『ベルサイユのばら』をミュージカル化して上演したのは1974年8~9月の月組公演が最初。このときは演出を俳優の長谷川一夫が担当。音楽を歌謡界のヒットメーカー平尾昌晃が担当した。『ベルばら』はそれまでにもアニメ化や映画化の話が何度もあったが、作者・池田理代子は「映画は生々しすぎてイメージとあわない」などの理由で断っていたのだという。宝塚歌劇での舞台化が認められたのは、虚構の世界であることが観客にも理解されている、と考えたからだった。

 実は、宝塚版『ベルばら』の制作が発表されたときには、宝塚ファン、まんがの『ベルばら』ファン双方から強い反発があったそうだ。宝塚のイメージが崩れる。まんがのイメージが損なわれる、というのだ。初日の幕が上がるまでは、劇団関係者もずいぶん気を揉んだのだという。しかし、心配は杞憂に終わった。『ベルばら』の舞台は少女まんがの絢爛豪華な世界をそのままに見せて、大ヒットを記録する。それまで観客動員が低迷していた宝塚歌劇団はこの作品で盛り返し、付属の宝塚音楽学校には入学希望者が殺到した。

 74年から76年にかけては、当時の4組(花・月・雪・星)がそれぞれ異なった脚本でのロングラン公演を行い、公演回数707回で観客動員は160万人に達した。その後も「平成版」「2001年版」「マリー・アントワネット生誕250年記念版」と再演を繰り返し、08年からは新たにスピンアウトストーリーを描く「外伝」シリーズが、地方公演ヴァージョンでスタートした。今回私が観たのは、地方公演版を本公演用にリファインしたものだ。文字通り、宝塚=ベルばらであり、ベルばら=宝塚なのである。
 
 ベルばらの成功以後、宝塚歌劇は積極的にまんがをとりあげるようになった。池田理代子作品では『オルフェウスの窓―イザーク編―』が、木原敏江作品では『とりかえばや異聞』を原作とする『紫子』や、A&Sゴロンの小説をコミカライズした『アンジェリク 青き薔薇の軍神』など、青池保子作品では『エル・アルコン―鷹―』と『七つの海七つの空』をひとつの作品に構成した『エル・アルコン―鷹―』、ほかに、萩尾望都の『アメリカン・パイ』、大和和紀の『あさきゆめみし』などが上演されている。また、手塚治虫の『ブラック・ジャック』と『火の鳥』も、宝塚市立手塚治虫記念館の開館に合わせて舞台化された。

 一方で、手塚治虫の『リボンの騎士』をはじめ、田村由美の『BASARA』やアニメ・シリーズ『少女革命ウテナ』(さいとうちほがコミカライズ)のように宝塚を連想させる作品も少なくない。

 少女まんがと宝塚歌劇の共通点は、主人公が凛々しくてかっこよくて、現実の男の子よりもしっかりしていて、ずっと優しいということだろう。まつげが長く華奢な少女まんがのヒーロー像は、男役を演じる男装の麗人の影響だ。舞台が日本の王朝時代や架空のものも含めた外国、とエキゾチックで、コスチュームがゴージャスということも共通点だろう。


 宝塚歌劇だけではない。最近はまんがを原作とする演劇が増えているのだ。

 なんと言っても、一番人気は許斐剛の原作をミュージカル化した「テニミュ」ことミュージカル『テニスの王子様』だ。2003年春に東京芸術劇場公演以来、全国各地で公演を重ね、ミュージカル本公演と年に1回のコンサート「Dream Live」を合わせた観客動員は90万人を超える大ヒット作になった。DVDなどの関連商品やグッズも売れている。こちらも、ファンの中心は女性で、彼女たちが夢中になる理由は、登場人物たちが爽やかでかっこいいことだ。

 また、男性だけで構成される劇団「スタジオライフ」は、萩尾望都の『トーマの心臓』や『訪問者』、三浦順の『Sons』、清水玲子の『月の子』などを舞台化して人気が高い。ほかに、手塚治虫の『火の鳥』をミュージカル化して上演いる劇団「わらび座」もロングランの全国ツアーを続けている。横山光輝の『鉄人28号』は今年、押井守の手でミュージカル化された。ちょっと変わったところでは、漫画原作者の樹林伸(亜樹直や天樹征丸など複数のペンネームを持つ。作品に『金田一少年の事件簿』『神の雫』など多数)が新作歌舞伎『石川五右衛門』の脚本を担当して話題になったのも記憶に新しい。

 舞台という空間に制限される演劇表現は、コマに制限されるまんが表現と非常に似通っていると思う。舞台の上下左右を区切るプロセニアムには、額縁という意味があるが、まんがのコマの枠も絵画の額縁から生まれた、という説がある。まんがと演劇は非常に近いところにいるのだ。演劇界はもっともっとまんがに注目していいのかもしれない。




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