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まんがのしくみ

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プロフィール:中野晴行(なかの・はるゆき)
1954年生まれ。和歌山大学経済学部卒業。 7年間の銀行員生活の後、大阪で個人事務所を設立、フリーの編集者・ライターとなる。 1997年より仕事場を東京に移す。
著書に『手塚治虫と路地裏のマンガたち』『球団消滅』『謎のマンガ家・酒井七馬伝』、編著に『ブラックジャック語録』など。『マンガ産業論』で日本出版学会賞奨励賞、日本児童文学学会奨励賞を、2008年には『謎のマンガ家・酒井七馬伝』で第37回日本漫画家協会賞特別賞を受賞。2009年、「まんがのしくみ」連載を電子書籍化した『まんが王国の興亡 ―なぜ大手まんが誌は休刊し続けるのか―』をリリースしたのちに、『マンガ進化論』と改題して書籍出版。

まんが王国の興亡

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コラム 2009/05/21
第36回 コンテンツ産業を利用したバラマキ行政? 
どうなる? 「国立メディア芸術総合センター」の未来


 5月13日に衆議院を通過した2009年度補正予算に、文化庁が構想する「国立メディア芸術総合センター(仮称)」の整備費として117億円が盛り込まれることになった。まんがやアニメ、映画、ゲームなどの作品を展示する施設で、建設候補地は東京のお台場。2011年の完成を目指すという。

 今回の補正予算は、世界同時不況からの脱出を目指した「景気対策」が目的だ。ゼネコン業界のテコ入れ策としてなら117億円も意味があるのだろう。運営は独立行政法人国立美術館が外部委託、ということだから企画や運営に携わるであろう広告業界等もおそらくは潤うはずだ。もちろん、しかるべき外郭団体が誕生して、国家公務員のみなさんも喜ぶだろう。

 だが、私個人としてはそれ以上の期待は今のところ持てないでいる。なにしろ、117億円は用地取得費や建設費であって、作品を収蔵するための費用ではない。予算案が衆議院を通過した段階でもなお、センターの中身がどうなるのか、ということは伝わっていないのである。開館まで2年ちょっとしかないのに中身の議論がない状態で、文化庁はいったいどんなものをつくるつもりなのか?


 予想できるのは、文化庁が毎年開催している「メディア芸術祭」をベースにしたようなまんがやアニメに、映像コンテンツやデジタルコンテンツが加わった複合展示なのだろう。文化庁は、これを「メディア芸術」と呼んで、日本初の新しいアートと位置づけているようだが、まんが界からもアニメ界からも「メディア芸術」というコンセプトそのものに不満が多いようだ。

 また、メディア芸術祭の場合は、その年の受賞作品などを中心とした展示と、関連したシンポジウムなどで運営されているが、常設の展示施設ともなれば、そうも言ってはいられなくなるだろう。

 はじめからきちんとしたコンセプトをつくり、必要な収蔵作品とまんがやアニメなどに詳しい学芸員など適切なスタッフを確保しなければ、ただの箱物に終わる可能性が高い。計画にある年間60万人の入場者で1億5000万円の入場収入(中身もないのにどうやって計算したんだ!?)も机上の空論に終わりかねない。

 箱物批判に対して文化庁は、日本経済がコンテンツ産業を核に浮上していくためにもセンターは必要で「未来への投資」である、としている。つまり、メディア芸術が関連産業を振興し、経済対策になると言うのだ。

 だとすれば、コンテンツ産業に関するリサーチ能力や支援能力をセンターが持たなければならないのだが、そんな話は出ていない。展示スペースができたから、コンテンツ産業が発展するわけではない。人材の育成、市場の開拓、ネットワーク作りなどの事業支援がなければ、絵に描いた餅である。

 市場の開拓や産業支援は文化庁ではなく、経済産業省の領域ということなのかもしれないが、それなら文化庁は「未来への投資」などとは言わない方がいい。正直に「箱物には財政赤字という副作用がつきものだが、短期的なカンフル効果はある」と言えばいいのだ。

 それでもなお、センターがコンテンツ立国をめざす日本の長期戦略に必要だ、というのなら、はっきりとしたグランドデザインを早急につくるべきだ。2年という期間では短いのなら、建物が先でも構わないから、中身に関しては十分に時間をかけるべきだろう。

 予算案はすでに衆議院を通ってしまったのである。参院で仮に否決されても、再可決または自動的に可決されてしまうのである。国民の税金117億円を使うことだけはもはや決まってしまったのだ。

 無駄遣いになって「やっぱりまんがやアニメじゃだめ」なんてことを言わせないためにも、期待はしないが今後の動きにはしっかり目を光らせておきたい、と私は思うのだ。


★★ 編集部からのお知らせ ★★
2009年5月22日、「まんがのしくみ」書籍版『マンガ進化論』が全国書店にて発売!

マンガ進化論

連載読者の方々の熱いご要望にお応えする形で、書籍版『マンガ進化論』がブルース・インターアクションズより5月22日に発売されることになりました。

『マンガ進化論』発売記念、担当編集者インタビューはこちら


【書籍版発売に寄せられた書店さんからのコメント】

「これまでの、そしてこれからのマンガについて体系的に書かれた1冊。
今の日本を救う、大きなチャンスはマンガ産業の未来にかかっているかもと本気で思った。今日からマンガをもっと読もう、もっと語ろう! 」

昼間 匠(リブロ港北東急SC店)


「とてもスッキリしました!
正直言って、こんなにわかりやすく、今のコミック産業の立ち位置と
方向性を教えてくれる本は見たことがありません。」

岡本  直(TSUTAYA  BOOKUNIT  MDリーダー)




電子書籍版・書籍版、お好みの方法で「まんがのしくみと未来」が展望できます!


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