毎日更新!!漫画大目録

世界最大の電子書籍大目録

電子書籍販売点数39910点

まんがのしくみ

まんがのしくみ
最近のコラム一覧 アクセス数ベスト10
前へ
プロフィール:中野晴行(なかの・はるゆき)
1954年生まれ。和歌山大学経済学部卒業。 7年間の銀行員生活の後、大阪で個人事務所を設立、フリーの編集者・ライターとなる。 1997年より仕事場を東京に移す。
著書に『手塚治虫と路地裏のマンガたち』『球団消滅』『謎のマンガ家・酒井七馬伝』、編著に『ブラックジャック語録』など。『マンガ産業論』で日本出版学会賞奨励賞、日本児童文学学会奨励賞を、2008年には『謎のマンガ家・酒井七馬伝』で第37回日本漫画家協会賞特別賞を受賞。2009年、「まんがのしくみ」連載を電子書籍化した『まんが王国の興亡 ―なぜ大手まんが誌は休刊し続けるのか―』をリリースしたのちに、『マンガ進化論』と改題して書籍出版。

まんが王国の興亡

連載目次へ
 
コラム 2009/04/23
第34回 まんが販売回復の特効薬は立ち読み容認!?


 東京の桜の名所、千鳥ヶ淵までお花見に出かけたついでに、九段下の「昭和館」で開催されていた「ワーナー・ビショフ写真展『Japan』より」を見学してきた。

 ワーナー・ビショフはスイス出身の写真ジャーナリストで、世界的な報道写真集団「マグナム」の会員。1951年に来日した彼は、52年まで日本に滞在して、戦後日本の人々の姿をフィルムに記録。54年に飛行機事故で亡くなったが、彼が日本で撮影した写真は没後に写真集『Japan』として刊行された。

 今回展示されたのは『Japan』収録作品に未収録作品を加えた60点。私が目を引かれたのは、本屋の店先で夢中にまんがを読む子どもたちを捉えた1枚だった。

 小学校2年生くらいの小さな女の子が3人。少しお姉さんの4年生くらいの女の子が2人。女の子ばかりなのはおそらく、少女雑誌の発売日なのだろう。月刊誌の時代は少年雑誌と、少女雑誌の発売日は決まっていたのだ。これが少年誌の発売日なら、男の子も含めた子どもであふれたのではないか。

 撮影は1951年。場所は東京のどこか。服装からして夏だろう。

 かつては、雑誌の発売日になるとこんな光景があちこちで見られた。かく言う私も立ち読みでまんがを読んだクチ。なにしろ、子どものお小遣いでは雑誌やまんが本なんて買えなかったのだ。親が買ってくれるのはせいぜい1誌。それも学年誌だ。おもしろいまんががいっぱい載っている少年雑誌や少女雑誌はなかなか買ってもらえない。

 読みたければ、買ってもらっている友達のところに行くか、雑誌を置いている散髪屋などに行くか、貸本屋で借りるか、あとは立ち読みである。

 中学生くらいから多少は自分でまんがを買うようになったが、それでも立ち読みは続けていた。けちなのではない。乏しいお小遣いでどれを買うのか、まず目を通しているのである。


 立ち読みができなくなったのはいつ頃からだろうか。おそらく、25年くらい前だろう。その頃から立ち読み対策としてまんがの単行本はビニール袋に入れられるようになったのだ。たしか、豆腐パックのビニール包装機メーカーが本屋向けに本を通すだけでカバーができる機械を開発した、と聞いたことがある。今はシュリンク(縮む)カバーが主流だ。

 立ち読みをされると本が傷むし、タダ読みばかりでは商売あがったり、というのはわかる。しゃがみこんで日がな一日立ち読みをしているような人がいると邪魔でもある。

 が、立ち読みができないのはなかなか不便だ。内容を確認しないで買うしかないのだ。
買って読んでがっかり、なんてこともある。立ち読みをしてみて、「あ、面白そう」と思って買うこともあったのだが、それもなくなった。それじゃあ、まんが喫茶や新古書本のほうがいいんじゃないか、という気になってもおかしくない。

 私は、まんがの売れ行きが落ちた理由のひとつに、立ち読みができないことがあるのではないか、と考えている。

 CDショップなどでは視聴ができるところが多い。店長がお気に入りのものをBGMがわりに流していると、その作品が自然に売れていくと聞いたこともある。食品売り場の試食コーナーみたいなものである。

 まんが専門店などでは途中まで読めるようにしていたり、試し読み版をつくる版元も出てきたが、まだまだ少数派だ。本をシュリンクしたら市場がシュリンクした、では困る。立ち読み復活は、まんがの売り上げ回復のひとつの処方箋になるのではないか。本を汚したり、長時間粘るなどといった目に余る立ち読みは注意すればいいし、逆ギレされたらしかるべき対応をとればいい。

 かつて立ち読みで、まんがを夢中になって読んだ子どもたちが成長して、その後のまんが市場を支えたのだ。立ち読み容認は将来に対する先行投資でもあるのだ。損して得取れ。

 その点、立ち読みが可能なイーブック・ジャパンはちょっと進んでいると、おべんちゃらではなく思うのである。


コラム関連目録 暴れん坊本屋さん

ページのトップへ

次へ 前へ
連載目次へ

このサイトは、インターネットエクスプローラー(Microsoft Internet Explorer) Ver.5.5 SP2以上でご覧ください。

ebookjapan