毎日更新!!漫画大目録

世界最大の電子書籍大目録

電子書籍販売点数39910点

まんがのしくみ

まんがのしくみ
最近のコラム一覧 アクセス数ベスト10
前へ
プロフィール:中野晴行(なかの・はるゆき)
1954年生まれ。和歌山大学経済学部卒業。 7年間の銀行員生活の後、大阪で個人事務所を設立、フリーの編集者・ライターとなる。 1997年より仕事場を東京に移す。
著書に『手塚治虫と路地裏のマンガたち』『球団消滅』『謎のマンガ家・酒井七馬伝』、編著に『ブラックジャック語録』など。『マンガ産業論』で日本出版学会賞奨励賞、日本児童文学学会奨励賞を、2008年には『謎のマンガ家・酒井七馬伝』で第37回日本漫画家協会賞特別賞を受賞。2009年、「まんがのしくみ」連載を電子書籍化した『まんが王国の興亡 ―なぜ大手まんが誌は休刊し続けるのか―』をリリースしたのちに、『マンガ進化論』と改題して書籍出版。

まんが王国の興亡

連載目次へ
 
コラム 2009/02/26
第30回 東京・豊島区が「まんがの聖地」で街づくり


 2月12日付の『東京新聞』朝刊に「漫画の聖地をPR」というニュースが出ていた。豊島区椎名町の「トキワ荘」や、雑司が谷の「並木ハウス」など、手塚治虫をはじめとするまんが家ゆかりの「聖地」を活用した街づくりに区が着手するという内容だ。

 計画では、手塚治虫や石森章太郎(当時)、赤塚不二夫、藤子不二雄(当時)らが生活したトキワ荘の跡地と、トキワ荘を出たあとで手塚治虫が3年余り生活した並木ハウスを「文化資源」と位置づけて、トキワ荘記念碑の設置や区立郷土資料館でのトキワ荘関連の企画展、並木ハウス周辺での歴史ある街並みとまんが文化とを融合させた街並み整備に取り組むというものだ。

 まんがやアニメを核にした町づくりは日本全国で行われていて、東京でもアニメ会社が集中する杉並区や練馬区が熱心に取り組んでいる。3月18日から21日まで、東京ビッグサイトで開催される「東京国際アニメフェア2009」でも、昨年好評だった企画展「全国マンガ・アニメーションミュージアム展」をグレードアップした「全国マンガ&アニメーションミュージアムEXPO」が目玉企画のひとつになるという。

 ただ、これまでのまんがやアニメを核にした町づくりと、今回の豊島区の取組みが少し違うのは、まんがやアニメのキャラクターを主に集客目的のために使うのではなく、ひとつの文化遺産と認めて、街並み整備にまで踏み込んだところではないかと思う。

 私としては、外から人を呼び込むのではなく、住民にとってわが町が「まんがの聖地」であることが誇りになるような街づくりが実現することに期待したい思いがある。


 まんがを核にした街づくりで、日本一の成功例は鳥取県境港市の水木しげるロードだろう。駅から町の中心の商店街まで、妖怪の銅像がならぶ道には休日ともなれば多くの観光客が押し寄せ、赤字ローカル線だったJR境港線の乗客も増えたのだと言う。

 境港の事例で私が注目したいのは、地元の商店街が独自におみやげ物の商品開発をし、手作りの観光案内所や休憩所を地元の人々が運営したということだ。

 聞けば、市が水木しげるロードを計画した当初は家の前に妖怪が置かれるのは気持ち悪い、という声もあったのだという。それが、人々が次第に妖怪に親しみの感情を持ち、いつしか自分たちの町を妖怪の町として誇りに思うようになったのだ。そこから町の活気が生まれた。その活気が大きな魅力となって人を呼ぶのだ。

 ひとつには妖怪が日本人の暮らしに根ざしたものだ、ということもあるだろう。地元出身のまんが家である水木しげるの人柄や人気によるものもあるだろう。郊外の大型店に取られたお客をなんとか、という思いもあるだろう。しかし、重要なのはやはり、人々が妖怪に誇りを持ったことなのだろうと思う。

 まんがファンが全国からやってくるというだけでは、初めはよくてもやがて飽きられる。そうならないためには、住民が自分たちの誇りを守るために、新しい取組みを続ける、というような状態を早く作る必要がある。

 そのためには、まんが家や作品にどんな文化的価値があるのかを住民ひとりひとりに知ってもらうことからはじめるしかない。これは地道な作業だが、それなくしてまんがやアニメを核にした町づくりはできない。そう言い切ってもいいと私は考えている。だから、豊島区の今回の取組みには、かなり期待しているのである。


コラム関連目録 ナマちゃん

ページのトップへ

次へ 前へ
連載目次へ

このサイトは、インターネットエクスプローラー(Microsoft Internet Explorer) Ver.5.5 SP2以上でご覧ください。

ebookjapan