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まんがのしくみ

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プロフィール:中野晴行(なかの・はるゆき)
1954年生まれ。和歌山大学経済学部卒業。 7年間の銀行員生活の後、大阪で個人事務所を設立、フリーの編集者・ライターとなる。 1997年より仕事場を東京に移す。
著書に『手塚治虫と路地裏のマンガたち』『球団消滅』『謎のマンガ家・酒井七馬伝』、編著に『ブラックジャック語録』など。『マンガ産業論』で日本出版学会賞奨励賞、日本児童文学学会奨励賞を、2008年には『謎のマンガ家・酒井七馬伝』で第37回日本漫画家協会賞特別賞を受賞。2009年、「まんがのしくみ」連載を電子書籍化した『まんが王国の興亡 ―なぜ大手まんが誌は休刊し続けるのか―』をリリースしたのちに、『マンガ進化論』と改題して書籍出版。

まんが王国の興亡

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コラム 2009/02/12
第29回 杉浦茂生誕101年に思う、まんが週刊誌の登場による描き手の変化


 京都国際マンガミュージアムで3月20日から開催される予定の「冒険と奇想の漫画家・杉浦茂101年祭」の実行委員会に加えてもらっている。担当は主に、図録兼公式ガイドブックの編集だが、そのための取材で杉浦家のご遺族にインタビューをして、なるほどなあ、と思ったことがあった。

 杉浦茂は『のらくろ』の作者・田河水泡の門下生で、戦前から数多くの子どもまんがを描いていたが、売れたのは戦後になってからである。少年雑誌に西部劇や冒険物のギャグまんがを描き、1953年の集英社おもしろ漫画文庫『猿飛佐助』で大ブレーク。各雑誌からひっぱりだこの人気まんが家になった。キャラクターが親指、人差し指、小指を立てた独特のポーズは、赤塚不二夫のレレレのおじさんの原型とも言われ、赤塚だけでなく、ちばてつややみなもと太郎らの多くのまんが家が子どもの頃に夢中になった。それだけではない、アーティストの横尾忠則やミュージシャンの細野晴臣らも子ども時代には大の杉浦ファンだったのだ。

 しかし、人気がピークだった1957~58年にかけて集英社が出した『杉浦茂傑作漫画選集』全8巻以降、仕事はぱったりと止まった。その後70年代になってから、劇画誌やサブカルチャー系の雑誌にシュールなギャグまんがを発表して再び注目を集めたが、メインストリームの少年雑誌に戻ることはなかったのである。

 ご遺族によれば、杉浦は幼少の頃から体が弱かったため、体をいたわりながら仕事をしていたのだが、昭和30年代の人気絶頂の時期はそうも言っておられず、ちょうど『杉浦茂傑作漫画選集』が終わった頃に体調を崩したのだ、と言う。折りしも、雑誌は月刊誌から週刊誌へ移る過度期。毎週の締め切りには体がついていかないと判断した杉浦は、週刊誌には移らなかったそうだ。

 実は、月刊誌から週刊誌への移行時期には、多くのベテランまんが家が、週刊誌の仕事を断っている。週刊誌の仕事を始めたものの、まもなくやめてしまったベテランも少なくない。彼らはその後月刊誌の廃刊が相次ぐと、学習まんがやデザインの世界に移っている。出版社の嘱託のようなかたちで、カット描きなどで残ったまんが家もいた。

 杉浦茂はその後も注文があれば読みきりなどをマイペースで描き続け、70年代の再評価による第2のブームを迎えるのだが、これは稀なケースだろう。まあ、稀だからこそ没後にもなお「101年祭」というようなイベントが開催されるわけだが……。


 消えたベテランたちに代わって台頭してくるのが、石ノ森章太郎や藤子不二雄(当時)、赤塚不二夫、ちばてつやたち当時の若手まんが家たちだ。やがて、貸本まんがからもさいとう・たかをらの若手が、週刊誌に参入してくる。彼らは若さにものを言わせて、徹夜の連続もものともせずに作品を描き続けた。月刊誌時代のビッグスターで最後まで生き残ったのは怪物・手塚治虫くらいである。媒体の移り変わりが、描き手の顔ぶれもドラスチックに変えてしまったわけだ。

 今、まんが媒体は再び過度期を迎えようとしている。アナログからデジタルへまんが媒体が移るとき、おそらく描き手もまたドラスチックに変わるのだろう。昨年の夏、京都精華大学で「マンガ産業論」の集中講義を行ったときには、未来のまんがについて「ここから先は私には分かりません。それはみなさん自身の手で創り出してもらいたい」と締めくくったのだが、今もその考えは変わっていない。

 杉浦茂のご遺族の話を聞いて、その思いはさらに強まったような気がするのである。


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