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まんがのしくみ

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プロフィール:中野晴行(なかの・はるゆき)
1954年生まれ。和歌山大学経済学部卒業。 7年間の銀行員生活の後、大阪で個人事務所を設立、フリーの編集者・ライターとなる。 1997年より仕事場を東京に移す。
著書に『手塚治虫と路地裏のマンガたち』『球団消滅』『謎のマンガ家・酒井七馬伝』、編著に『ブラックジャック語録』など。『マンガ産業論』で日本出版学会賞奨励賞、日本児童文学学会奨励賞を、2008年には『謎のマンガ家・酒井七馬伝』で第37回日本漫画家協会賞特別賞を受賞。2009年、「まんがのしくみ」連載を電子書籍化した『まんが王国の興亡 ―なぜ大手まんが誌は休刊し続けるのか―』をリリースしたのちに、『マンガ進化論』と改題して書籍出版。

まんが王国の興亡

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コラム 2009/01/15
第27回 祝? コンビニコミック誕生10周年


 「コンビニコミック」と呼ばれるコンビニ向け廉価版まんが単行本が今年、誕生して10年目の節目を迎える。小学館がコンビニコミック第1号の「My First BIG」を創刊したのが、1999年7月。当時、小学館コミック編集局企画室長だった熊田正史氏(現・京都精華大学マンガ学部教授)によれば、もともとはコンビニのセブン・イレブンからの「何か新しいアイテムを」という依頼からはじまったものだという。

 コンセプトは、会社帰りにコンビニでお弁当を買う単身者が気軽に読める単行本。年代的には30代前後が想定されていた。作品は過去の名作の中からピックアップ。1冊300円という値段設定は、お弁当とお茶とまんがを買って1000円札でおつりがくるところから来ている。B6版で200ページ弱。1冊読んで満足できるように、長編の中でもひとつのエピソードをまとめて編集する工夫がされていた。全部を読みたくなった人には単行本を買ってもらえばいい、という割りきり方だった。実際、かざま鋭二の『風の大地』のように、コンビニコミックが出たことで単行本の売れ行きに火がついた作品も出た。

 深夜でも開いているコンビニでまんがが手軽に買えることもあって、コンビニコミックは書店に足を運ばない(運べない)人たちをもまんが読者として取り込んだ。小学館以外の出版社も続々と参入して、コンビニにはコミックコーナーまでできた。販売チャンネルの拡大が市場拡大に繋がったのである。


 よく「コンビニコミックはあれで採算が取れるのか?」と聞かれることがあるが、採算は十分に取れている。元気のないまんが出版の中で、コンビニコミックは収益のあがる部門なのだ。それは、書店で売られる単行本に比べて、コンビニコミックがかなり低コストだからだ。

 装丁は雑誌風で、本文の紙も安いものが使われている。「読み捨て」が前提になっているからだ。印刷も原稿から版を起こすのではなく、単行本のときに原稿から撮った写真版フィルムが流用される。そして何よりもコストを下げるのが印税である。著者に支払われる印税は、印刷した部数に対して支払う「刷り印税」と、売れた部数に対して支払う「売り印税」の2つの方法がある。通常、書店売りの単行本は刷り印税だが、コンビニコミックは原則として売り印税である。

 書店では2ヶ月なり3ヶ月という期間をかけて本を売るが、コンビニの商品サイクルは長くて1ヶ月。通常は2週間程度だ。書店用の単行本は何ヶ月も先でないと売れた部数がはっきりしないので、売り印税がとりにくい。しかし、コンビニなら翌月には何部売れたかわかっているので、売り印税でいい。まんが家も、コンビニコミックは旧作の再録のようなものだから、刷り印税にあまりこだわらない。コンビニという新しいチャンネルの特性が、廉価でも儲かる単行本を可能にしたのだ。

 だが、さすがに誕生10年ともなると、かつてのようなパワーが失われてきたことも事実だ。ライバルとしてケータイコミックが普及している影響もあるのだろうが、最大の原因は、コンテンツが底をついてしまったことにある。コンビニの利用者が喜ぶのは「気軽に読めて面白い」まんがだ。かつて話題になった作品でも暗いものや、難しいものは売れない。1970年前後より前のまんがも古臭くて敬遠される。そうなってくると、実は売れそうなものはほとんど出尽くしてしまった感さえあるのだ。

 すでに人気作品は何度も体裁を変えて再刊され、ワイド版と呼ばれる合本スタイルも含めて5回以上登場している作品も多い。最近では、過去の名作ではなく、連載中の作品までコンビニコミック化されている状態だ。サイズを大きくしたり、文庫サイズにしたりもしているが、おなじみのB6サイズほどは売れていない。

 コンビニのメリットをより突き詰めた新商品を生み出すのか、コンビニに代わる新たな販路を見出すのか。10歳になったコンビニコミックは大きな岐路に立っているとも言えそうだ。



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