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まんがのしくみ

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プロフィール:中野晴行(なかの・はるゆき)
1954年生まれ。和歌山大学経済学部卒業。 7年間の銀行員生活の後、大阪で個人事務所を設立、フリーの編集者・ライターとなる。 1997年より仕事場を東京に移す。
著書に『手塚治虫と路地裏のマンガたち』『球団消滅』『謎のマンガ家・酒井七馬伝』、編著に『ブラックジャック語録』など。『マンガ産業論』で日本出版学会賞奨励賞、日本児童文学学会奨励賞を、2008年には『謎のマンガ家・酒井七馬伝』で第37回日本漫画家協会賞特別賞を受賞。2009年、「まんがのしくみ」連載を電子書籍化した『まんが王国の興亡 ―なぜ大手まんが誌は休刊し続けるのか―』をリリースしたのちに、『マンガ進化論』と改題して書籍出版。

まんが王国の興亡

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コラム 2008/08/28
第15回 「バカボン」から「ニャロメ」「おそ松くん」まで
赤塚不二夫さんが生み出したキャラクター達は永遠に


 8月2日、ギャグまんがの天才・赤塚不二夫さんが亡くなった。2002年に脳内出血で倒れてから実に6年4ヶ月の闘病生活だった。まずは冥福をお祈りしたい。

 とは言え、私自身は赤塚さんの死がまだ現実のことのようには思えないでいる。それは、赤塚さんが生み出したキャラクターたちが、今なお健在だからかもしれない。

 赤塚さんの闘病中もバカボンのパパや、イヤミや、ニャロメたちは、作者に代わってさまざまな場所で活躍していた。キャラクター商品や、キャンペーンのマスコット・キャラクターとして、私達は常にその姿を目にしてきた。昨年は『天才バカボン』のベスト版単行本が、小学館と講談社というライバル同士のコラボ企画として刊行され、NHKのニュースに登場するほどの話題になった。

 おそらく、赤塚さんのキャラクターたちはこれからも多くの人に愛され続けるだろう。

 鉄腕アトム、鉄人28号、ドラえもん、仮面ライダーなどなど、原作者が亡くなった後も生き続けているキャラクターは多い。若いファンの中には、これらのキャラクターの原作者がすでに亡くなっていることを知らない人もたくさん混じっているはずだ。

 これもまたマンガ産業が大きく育った結果なのである。

 私が言うマンガ産業とは、マンガが、雑誌などの連載から始まって、単行本になり、アニメ化され、それがDVDやCD、電子書籍(ebook)になり、キャラクター商品がつくられ、あるいは海外に輸出されてそこで同じようにキャラクター商品化されるという「ワン・コンテンツ・マルチ・ユース型」に組み上げられた巨大なシステム全体のことである。ゲームからマンガやアニメになった「ポケモン」のような例も含めて広い意味でのマンガ産業と呼んでいる。


 かつて、マンガがまだ産業とも呼べなかった時代。1960年代半ばまでは、マンガのキャラクター商品が作られてもそれは一過性のものに過ぎなかった。マンガの連載が終わったり、アニメの放送が終わればキャラクターたちも消え行く運命だった。市場規模が小さすぎて、原作やアニメの人気という支えがなければ、キャラクターだけでは市場を維持できなかったのである。TVアニメのスポンサーも飽きられたら新しいキャラクターに平気で乗り換えた。「マンガやアニメのキャラクターは当たると大きいが、旬が極端に短い」と言われたものだ。

 しかし、マンガ産業が大きく成長すると事情が変わってくる。キャラクター商品の市場が拡大し、原作やアニメの人気という支えがなくても、マーケティング戦略の立て方や、商品展開を工夫すれば、市場を維持できる規模になったのだ。「原作は知らないけどニャロメは好き」という消費者の数が市場を支える規模になった、と言い換えてもいいだろう。

 最近10年くらいは、過去の人気キャラクターでも、リメイクやリモデルを含めたマーケティング戦略次第で、新たな市場を開拓することができるまでになっている。そのため、アニメ制作会社も積極的に過去の人気キャラクターの掘り起こしを行っているのだ。

 では、初めからキャラクター商品化などを意識してオリジナルをつくればいいのか? 答えは
NOである。ここがマンガ産業のシステムの難しさかもしれない。核となるのはあくまでもオリジナルのパワーなのだ。さまざまな形で使われることに耐えるだけの個性とメッセージが必要なのだ。それが、オリジナルを離れ、オリジナルを知らない消費者のハートまでをも掴む原動力になるのである。

 赤塚さんのキャラクター達はどれも強烈な個性を持ち、強いメッセージを発している。かつて赤塚さんは「目玉のおまわりさんは官憲の象徴で、ニャロメはゲバ学生達」と言ったことがある。オリジナルにはそれだけの社会風刺と世の中へのメッセージがこめられていたのだ。

 人間には寿命があるが、描かれたものは永遠だ。マンガ産業のこれからを占うとき、まんが家がどれだけ多くパワーのあるキャラクターを生みだし、まんがに関わる企業がどれだけ長くその魅力を維持させることができるか、が重要な要素になるのだと考えている。



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