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まんがのしくみ

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プロフィール:中野晴行(なかの・はるゆき)
1954年生まれ。和歌山大学経済学部卒業。 7年間の銀行員生活の後、大阪で個人事務所を設立、フリーの編集者・ライターとなる。 1997年より仕事場を東京に移す。
著書に『手塚治虫と路地裏のマンガたち』『球団消滅』『謎のマンガ家・酒井七馬伝』、編著に『ブラックジャック語録』など。『マンガ産業論』で日本出版学会賞奨励賞、日本児童文学学会奨励賞を、2008年には『謎のマンガ家・酒井七馬伝』で第37回日本漫画家協会賞特別賞を受賞。2009年、「まんがのしくみ」連載を電子書籍化した『まんが王国の興亡 ―なぜ大手まんが誌は休刊し続けるのか―』をリリースしたのちに、『マンガ進化論』と改題して書籍出版。

まんが王国の興亡

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コラム 2008/08/14
第14回 アマチュアの祭典から巨大市場に拡大膨張する同人誌マーケット


 まんがファンの祭典・コミケ(コミックマーケット)の夏がやってきた。今夏のコミケは、8月15日から17日の予定で、東京国際展示場(東京ビッグサイト)を会場に開催される。同人誌などを即売するサークル参加はおよそ3万5000スペース。3日間の一般参加者は延べ55万人(いずれも昨年夏実績)。東京ビッグサイトの6つあるホールをすべて使うイベントは、今のところコミケだけだ。

 会場内は、中東のグランバザールやスークを思わせるような熱気で、会場の見取り図代わりにもなる「カタログ」なしで目的のサークルに辿り着くのは至難の業だ。私などは暑さと人ごみに当てられて、半日でへとへとになってしまう。販売用のテーブルに並ぶのはまんがの同人誌のほか、自作のゲーム、アニメ、そして手づくり人形やアクセサリー、ファッションなど。さまざまなジャンルの愛好家達が作品を売り買いする、文字通りコミックとその周辺の「市場」である。


 コミケがスタートしたのは1975年12月。会場は東京・虎ノ門の日本消防会館会議室。参加サークルは32で、一般参加者は約700人。当時は今と違って、まんがファン同士が交流する場はほとんどなく、せっかくつくった同人誌も自分達のサークルの仲間内で流通するだけだった。コミケはそんなまんがファン達のフラストレーションから生まれたものだった。

 80年代に入ると、『宇宙戦艦ヤマト』のヒットによるアニメブームの影響で参加サークルも一般参加者も急増。まんがとアニメの一大イベントとしてマスコミからも注目されるようになった。増加する一方の参加者に対応し、会場も東京晴海・国際見本市会場、千葉・幕張メッセ等を経て、96年から現在の東京ビッグサイトに。もはや、単なるまんがファンの祭典ではなく、まんがやアニメ、サブカルチャー全般の巨大イベントにまで成長したという感がある。

 同様の同人誌即売会は、「コミックシティ」や創作中心の「コミティア」、新潟の「ガタケット」といった、コミケほどではないが大規模なものから、美少女ポルノ専門や特定のまんが・アニメのパロディ専門の中小規模なものまで、全国で無数に開催されている。2000年からはフランスでも「ジャパンエキスポ」と銘打った日本のまんが、アニメ、ポップミュージックのファンの祭典が開催されており、今年は12万人の参加者を集めたという。

 さらに、近年は即売会だけでなく、同人誌を扱う専門店も増えている。1990年代に入り、東京・秋葉原などに同人誌や同人ゲームを扱うショップができはじめ、「コミックとらのあな」や「まんだらけ」「アニメイト」など各地に支店を持つ大型専門店でも、大きく同人誌を扱うようになってきたのである。


 気になるのはその市場規模だが、例えば、5月に平成20年9月期中間決算(2007年10月~2008年3月)を発表した「まんだらけ」では、同人誌の売り上げが半年で9億4000万円、売り上げ全体の28.4%を占める。こうした商業流通同人誌の合計は120億円を超えると見られ、即売会、ネット通販などを加えた同人誌の市場規模は200億円以上という説もある。

 単価が新書版コミックスの3~4倍という事情もあるが、これだけの市場規模になってくると、アマチュアの趣味の範囲とばかりは言っておれなくなる。実際に、同人誌の売り上げでスタッフを含めた生活を支える「プロの」同人誌まんが家が存在したり、雑誌の仕事がなくなったプロ・まんが家が同人誌に活路を見出した、という話がいくつもあるのだ。

 またコミケ会場に企業用ブースが設けられるなど、出版社をはじめとする企業側も市場調査や作家の発掘のために同人誌即売会や専門店を利用するようになっている。企業も同人誌市場を無視できなくなっているわけだ。

 はたして、同人誌が既存のまんが産業を救うのか、はたまた既存のものに取って代わるのか。その点は項を改めて書きたいと思う。



コラム関連目録 高河ゆん

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