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まんがのしくみ

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プロフィール:中野晴行(なかの・はるゆき)
1954年生まれ。和歌山大学経済学部卒業。 7年間の銀行員生活の後、大阪で個人事務所を設立、フリーの編集者・ライターとなる。 1997年より仕事場を東京に移す。
著書に『手塚治虫と路地裏のマンガたち』『球団消滅』『謎のマンガ家・酒井七馬伝』、編著に『ブラックジャック語録』など。『マンガ産業論』で日本出版学会賞奨励賞、日本児童文学学会奨励賞を、2008年には『謎のマンガ家・酒井七馬伝』で第37回日本漫画家協会賞特別賞を受賞。2009年、「まんがのしくみ」連載を電子書籍化した『まんが王国の興亡 ―なぜ大手まんが誌は休刊し続けるのか―』をリリースしたのちに、『マンガ進化論』と改題して書籍出版。

まんが王国の興亡

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コラム 2008/03/12
第3回 70年代オイルショックが漫画市場を変えた!
石油と漫画の不思議な関係


原油価格の高騰が続いている。直接の原因は、中国やインドなど新興国の需要を見込んだ投機筋の買いがふくらんでいることだが、背景には一部産油国の政情不安など複雑な要因も絡んでいる。

「漫画と石油のどこに関係があるんだ!?」という声も聞こえそうだが、実は大アリなのだ。漫画雑誌や単行本に使う紙やインクは石油がなければできない。配本や返品には輸送のためのガソリンや軽油が必要だ。石油価格が上がれば、いずれそのコスト・アップ分を定価やページ数に反映させなければ出版社は成り立たなくなる。

 漫画と石油は非常に強いつながりを持っている。実は、今日の漫画の構造には、1970年代のオイルショックが大きな影響を与えているのだ。
 1973年、中東戦争の影響で石油危機が深まる中、11月にOPEC(石油輸出国機構)は原油生産の大幅削減を発表。石油メジャーも日本への供給削減を決めたことから、日本国内は深刻な原油不足に見舞われた。大阪のスーパーマーケットで起きたトイレットペーパーの買い占めが全国に波及するなど、日本経済は大混乱に陥った。いわゆる「オイルショック」だ。

 紙不足は出版界にも深刻な影響を与え、雑誌は軒並み減ページに追い込まれた。減ページはそのまま広告ページ削減につながる。まさか、広告はそのままで本文だけを削減するなんてわけにはいかないからだ。広告収入が落ち込んだ各社は、活路を単行本に求めた。単行本は一冊当たりの紙の消費が少なく、雑誌より少部数でも安定した収益を見込めるからだ。漫画もこの影響で単行本ラッシュとなった。
それまで、小学館や講談社など大手出版社はあまり漫画の単行本化には熱心でなかった。人気作品も他社で単行本化されることがほとんどだったのだ。「少年サンデー」や「少年マガジン」の人気連載の多くは、小学館のゴールデンコミックスや講談社の講談社コミックス(KC)ではなく、秋田書店の新書版単行本シリーズ「サンデー・コミックス」などに収録されていた。

 ところが、オイルショックをきっかけに、自社の作品は自社で単行本化という流れができはじめる。小学館は「少年サンデーコミックス」をスタートさせ、講談社は雑誌ごとの「講談社コミックス」を立ち上げた。このとき、秋田書店は「サンデー・コミックス」を「SUNDAY COMICS」に改題している。それまでは滅多に出さなかった新人漫画家の単行本を出すようになったのもこの頃からだ。その結果、連載はとにかく単行本化されるようになった。実際に各社の漫画の単行本は売れて、収益の柱になった。当時すでに悪くても5万部や10万部は売れるという、活字の単行本では考えられない数字を出したのだ。のちには、初版200万部を超える怪物も登場するようになる。

 いまや、多くの漫画雑誌が、単体では赤字でも単行本の収益を加算することで黒字化するシステムになっている。中には単行本を出すために、はじめから赤字とわかって雑誌を出しているところさえある。いや、実態はそういう雑誌が増えているのだ。2005年に、雑誌と単行本の販売金額がついに逆転したのが、ある意味では象徴的なできごとだった。

 さて、今回の原油価格高騰による「石油危機」は漫画にどのような影響を及ぼすのだろうか。石油によるコストアップが避けられない紙やインク、輸送費によるリスクを回避するためには、デジタル化がひとつの答えにはなるのではないか。私にはそのように思えるのだが……。


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