毎日更新!!漫画大目録

世界最大の電子書籍大目録

電子書籍販売点数39916点

まんがのしくみ

まんがのしくみ
最近のコラム一覧 アクセス数ベスト10
前へ
プロフィール:中野晴行(なかの・はるゆき)
1954年生まれ。和歌山大学経済学部卒業。 7年間の銀行員生活の後、大阪で個人事務所を設立、フリーの編集者・ライターとなる。 1997年より仕事場を東京に移す。
著書に『手塚治虫と路地裏のマンガたち』『球団消滅』『謎のマンガ家・酒井七馬伝』、編著に『ブラックジャック語録』など。『マンガ産業論』で日本出版学会賞奨励賞、日本児童文学学会奨励賞を、2008年には『謎のマンガ家・酒井七馬伝』で第37回日本漫画家協会賞特別賞を受賞。2009年、「まんがのしくみ」連載を電子書籍化した『まんが王国の興亡 ―なぜ大手まんが誌は休刊し続けるのか―』をリリースしたのちに、『マンガ進化論』と改題して書籍出版。

まんが王国の興亡

連載目次へ
 
コラム 2008/02/13
第1回 未来の漫画はマイナーから生まれる!
青林工藝舎『アックス』10周年


青林工藝舎発行の隔月刊漫画雑誌『アックス』が2007年12月発行の60号で創刊10周年を迎えた。

 白土三平の『カムイ伝』をはじめ、つげ義春の『ねじ式』、林静一の『赤色エレジー』など、数々の名作を世に出し、戦後漫画史に大きな足跡を残した『月刊漫画ガロ』の発行元・青林堂が、コンピュータ・ソフト・メーカーで当時の親会社だったツァイト破綻の余波で分裂。編集スタッフが中心となって生まれたのが『アックス』だった。1997年10月にまず、「月刊誌『ガロ』元編集部責任編集」を謳った『マンガの鬼』として登場した後、98年からは『マンガの鬼AX アックス』と改題して新装創刊。2000年から「マンガの鬼AX」の文字が取れて『アックス』となった。

 とは言え、このコラムを読んでいる人の中にも「アックスなんて雑誌は知らない」という人は多いのではないか、と思う。置いてあるのはかなりコアな漫画ファンが利用する専門書店だけ。それも数冊並んでいればいいほうだ。おそらく雑誌単体では慢性的な赤字で、単行本の黒字でなんとか収支トントン……それでも苦しい台所事情なのは想像がつく。漫画家をはじめ周囲の有形無形の協力が大きな支えになっているのであろう。

 多様な表現によって、今では広く外国からも注目されている日本の漫画だが、その多様性を支えてきたのは常にマイナーと呼ばれる出版社だった。戦後まもなく手塚治虫という天才を世に出したのは、大阪の俗に赤本屋と呼ばれた零細な出版社だった。1950年代に「劇画」ムーブメントを生んだのは、専ら貸本屋向けに本を作る小さな出版社たちだった。一方で東京の大手と言われる出版社は、マイナーな市場で育った描き手を引き抜くことで、新しい読者を獲得して成長してきた。

 60年代半ばに始まる青年コミック誌の創刊ラッシュでは、先に挙げた『ガロ』と手塚治虫の虫プロが発行した『COM』の、ふたつのマイナー誌から登場した漫画家たちがメインの描き手として活躍している。日本漫画発展の背景に、大手とマイナーの二重構造があったことは、記憶されるべきだろう。

 『アックス』もこの10年間、大手の出版社ではデビューが難しいであろう、斬新で優れた手法を持った描き手を数多く育ててきた。中野シズカ、西岡兄弟、島田虎之介、川崎タカオ……。毎年末に出る『このマンガを読め!』(フリースタイル)のベストテンには青林工藝舎の単行本が、大手出版社の作品を押しのけて何冊か必ずランクインされる。それだけ漫画の読み巧者を納得させる作品が多いということだ。

 さらに、これらの作品は「オルタナティブ・コミック」として、日本よりもむしろアジアや欧米で高い評価を受けている。韓国では『アックス』をお手本としたマンガ雑誌も創刊された、と聞いた。次世代の漫画表現が、『アックス』というこの小さな雑誌を舞台に模索され確立されていく可能性は極めて高い。

 それだけに、もうちょっと儲けて欲しい、と思わずにはいられない。ビルを建てなくてもいいから、せめて安定した経営ができるくらいにはなってほしい。そのためには、ひとりでも多くの人が雑誌を買うしかない。私はそう考えて、未来への投資のつもりで毎号買い続けているのである。


コラム関連目録 QJ選書

ページのトップへ

次へ
連載目次へ

このサイトは、インターネットエクスプローラー(Microsoft Internet Explorer) Ver.5.5 SP2以上でご覧ください。

ebookjapan