毎日更新!!漫画大目録

世界最大の電子書籍大目録

電子書籍販売点数39916点

イズミ少年の漫画日記

イズミ少年の漫画日記
最近のコラム一覧 アクセス数ベスト10
第25回 2009/10/27
ムラマサと70年代風俗
前へ
プロフィール:泉麻人
1956年東京生まれ。慶應義塾大学卒業後、週刊TVガイド編集部勤務を経て、フリーのコラムニストに。東京をテーマにした著書が多い。漫画関係の著書では赤塚不二夫作品の魅力にふれた『シェーの時代―「おそ松くん」と昭和こども社会』(文春新書)がある。2005年、気象予報士の資格を取得。

連載目次へ
 
2009/10/13
第24回 「なぁ~んちゃって」の系譜


高校生無頼控
何にでも精通する、スーパー高校生ムラマサ
(『高校生無頼控』より)©小池一夫/芳谷圭児

 ムラマサの常套句に「なぁ~んちゃって」というフレーズがある。この「なぁ~んちゃって」、何年かの周期で、ちょっと意味をズラして復活する……特異な流行語といえるだろう。

 僕が知る最初の「なぁ~んちゃって」は、1968年に始まった人気番組「夜のヒットスタジオ」のコントコーナーのなかで、放送作家の塚田茂が持ちネタにしていたものだった。時のヒット歌謡を題材にした短いコント劇を出演した歌手たちが繰り広げる、そのエンディングに、裏方の塚田がひょこっと現れて、両手を頭に当てヤングマンのMのようなマークを描いて「なぁ~んちゃって」と一言。瞬間一同どっとコケる――いわゆる昔風のオチとして使われていた。彼は、司会の前田武彦に「どんどんクジラ」のあだ名を付けられていたから、頭上のM字はクジラの潮吹きを表現していたのかもしれない。この“夜ヒットのなぁ~んちゃって”は、一斉を風靡するほどの流行語(アクション)とまではいかなかったけれど、番組をよく観ていた僕らはそんな印象もあって、「ムラマサは塚田茂のマネだ」などと言い合っていた。

 そして「高校生無頼控」の時期からおよそ5年後、78年に「なぁ~んちゃって」は都市伝説として大ブレイクする。山手線や地下鉄の車内に、イチャモンを付けた後に「なぁ~んちゃって」とぶちかまして去っていく奇妙なオッサンが出没する――そんなうわさがラジオ番組の投稿から火が付いて、「なんちゃっておじさん!」の呼び名でこの年の一大流行語となった。放送作家が仕掛けたネタだった……という説も流れたが、それが先の塚田かどうかは定かでない。

 さらに、それから十余年経った90年代の初め頃、ヴィトンなどのブランド品のニセ物に「なんちゃってヴィトン」といった表現が使われるようになったが、これもそろそろ死語の域といえるだろう。こうやって、少しずつ意味や場を変えて流行を繰り返す感じは「ハッスル」のフレーズなんかとも似ているが、今様の喩えとしては、「インフルエンザ的」というのが妥当かもしれない。

 さて、本題のムラマサの「なぁ~んちゃって」を分析すると、大方は理屈っぽい説教やクサイことを語ってしまったときに、その照れ隠しとして用いられているようだ。
「女性が男性の頼みを拒否することぐらい残酷なことはない……ヤコペッティいわく! なぁ~んちゃって」(「青春鎖国」の回)

 それから、ちょっと恥ずかしいオヤジギャグを放ってしまったときなどにも使われる。 「しあわせとしあわせをたして はちあわせ!」(「爪(つめ)たい女」の回)。


なあ~んちゃってと言うだけで皆がほほ笑む


 片手を頭の後ろに当てて、舌をぺろっと出して茶目っ気を見せている場面もある。
「なぁ~んちゃって」とともに、ムラマサの軽い一面を表現する話法に、前回も指摘したデスマス調があるけれど、これは回を重ねるうちに「~れす」と、いっそう軽薄化していったようだ。そして「感じる」ってのも、ムラマサお気に入りのフレーズ。
「感じる時代の青春アパッチ ダイナミックにバッチリと生きるんだよ! いま感じてる女の子はいないのかい?」

 と、これは「青春アパッチ」の回でモテない三人組の男たちにナンパのノウハウと説くシーン。しかし、いまは無論、70年代初めの当時としても、おもわず耳が紅らむようなストレートな恥語の連発だ。こんなオリジナルの唄をムラマサが披露している場面もある。
♪くらいマーックス! 愛! 感じる 涙! 感じる 別れ! 感じる 感じる時代! ラブタッチ! いいじゃんか そうじゃんか!(「拾イズム」の回)


ストレートな歌詞と力強い歌声に聴衆はメロメロ

 ちなみにラブタッチとは、ムラマサ特有の性行為を指す言葉。「高校生無頼控」は映画化されたはずだが、この曲、劇中に流れたりするのだろうか? 気になる。


高校生無頼控
『高校生無頼控』
原作:小池一夫 画:芳谷圭児 各315円(税込)

九州、鹿児島。腕っぷしが強く女好きの高校生・村木正人(通称・ムラマサ)は薩摩示現流の使い手である九州男児。彼の兄、鉄人は学生運動の過激派リーダーとして全国に指名手配され、所在をくらましているが、その恋人の和実は病床に臥し、明日をも知れぬ命で鉄人との再会を願っていた。正人は高校を中退し、兄を探しに東京へ!
コラム関連目録 小池一夫

ページのトップへ

次へ 前へ
連載目次へ

このサイトは、インターネットエクスプローラー(Microsoft Internet Explorer) Ver.5.5 SP2以上でご覧ください。

ebookjapan