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イズミ少年の漫画日記

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第25回 2009/10/27
ムラマサと70年代風俗
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プロフィール:泉麻人
1956年東京生まれ。慶應義塾大学卒業後、週刊TVガイド編集部勤務を経て、フリーのコラムニストに。東京をテーマにした著書が多い。漫画関係の著書では赤塚不二夫作品の魅力にふれた『シェーの時代―「おそ松くん」と昭和こども社会』(文春新書)がある。2005年、気象予報士の資格を取得。

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2009/09/29
第23回 スーパー高校生・ムラマサの衝撃


高校生無頼控
女性の前で裸を駆け出す、破天荒な主人公・ムラマサ
(『高校生無頼控』より)©小池一夫/芳谷圭児

 イーブックにフィーチャーされた作品リストのなかに「高校生無頼控」の名を見つけたとき、おもわず甘酸っぱいものがこみあげてきた。熱心に読んだというわけではなかったが、高校生のある時期に強い印象を残した作品である。と思って、中学高校生の時代に週一のペースで記録していた、僕のオリジナルの漫画ベストテン帳をめくってみると、72年の12月から、「高校生無頼控」がランクインしている。連載期間は71年の9月~73年の7月(漫画アクション)というから、すでにスタートして1年余りが経った頃になる。これは作品自体の人気よりも、読者の僕の生活環境に由来するものだろう。僕が高校に上がったのが72年の春だから、おそらく高校のクラスメートのクチコミで「高校生無頼控」の存在を知った……のだと思われる。実際、掲載誌の漫画アクションを当時自ら買った憶えはない。退屈な授業の最中に、不良学生の方から廻ってきたやつを机の下に隠してこっそり読んだ……そんな光景がぼんやりと思い浮かんでくる。

 小池一夫(作)と芳谷圭児(画)のチームによるこの作品、小池は当時「子連れ狼」が大ヒットして、劇画作家の売れっ子として名が知れていた。高校生無頼控――これは「ぶらいひかえ」と読むのだが、僕らは音読みで「ぶらいこう」と呼び回っていた。

 主人公は「だん突のムラマサ」こと村木正人。彼は薩摩示現流なる剣法に長けたスーパー高校生で、東大闘争を発端に姿を晦(くら)ませた過激派学生の兄を探して放浪の旅を続ける――という設定。行く先々で騒乱に巻き込まれ、そこで知り合った女を必ずモノにする…硬派と軟派をもちあわせた特異なキャラクターがムラマサの魅力だった。


ムラマサは、高校生ながら女性を悦ばせる術を知りつくしている


 芳谷圭児が描くムラマサ少年は、いまでいうソフトマッチョ体型の美男子で、その風貌は当時ブレイク中の郷ひろみを彷彿するものがあった。尤も、デビュー早々の郷ひろみはカールのかかったマッシュルームカットがトレードマークだったけれど、確か何かの映画で戦時中の兵隊役に起用されて、スッキリした短髪になったことがあった。その短髪のヒロミにムラマサのイメージは近かった。

 旧日本男児的な古風な様式を好むムラマサは、何かというと裸になってフンドシ姿を披露し、理屈っぽい調子の人生論を述べ立てる。たとえば<夜はギンギラ>の回で、年上のネオンデザイナーの女性を口説くシーン。

 「新聞に書いてあったけど 現代の高校生は無気力無抵抗無関心の三無主義だって 俺はちがうな 三流主義だもん! 汗を流し 涙を流し 血を流す! これが三流主義!!」 すると女は「カックイイ!!」と頬を紅らめてグラっとくる。

 カッコイイをいじったカックイイのフレーズも、もはや死語の部類になったけれど、三無主義というのも、僕の世代の高校生の志向を指す時代語の一つだった。学生運動後の若者の気分を表現したフレーズといえるだろう。それを翻(ひるがえ)した三流主義というのが、作中しばしば語れるムラマサの持論であり、おそらく作者・小池一夫の意思が投影されたものに違いない。

 しかし、ムラマサが面白いのは、理屈っぽいことをこねまわすばかりでなく、真逆のカル~いセリフを吐く場面もある。

 「セックスは楽しみ遊びながらするものだと思いまあ~す! あなたもリラックスして試して下さい だん突ムラマサの命中ごっこを!」「うひょオ~ッ! グンバツのナオンちゃん いい! いいぞォ~!」

 当時のニューミュージックの風味が感じられるデスマス調の話法ともう一つ、「なぁ~んちゃって」と笑ってごまかすリアクションがムラマサの持ちネタでもあった。そう、高校生無頼控といえば、この「なぁ~んちゃって」がまず思い浮かんでくるわけだが、次回はその辺について細かく言及したい。


持論を語るムラマサに、女性は皆、強く惹かれていく



高校生無頼控
『高校生無頼控』
原作:小池一夫 画:芳谷圭児 各315円(税込)

九州、鹿児島。腕っぷしが強く女好きの高校生・村木正人(通称・ムラマサ)は薩摩示現流の使い手である九州男児。彼の兄、鉄人は学生運動の過激派リーダーとして全国に指名手配され、所在をくらましているが、その恋人の和実は病床に臥し、明日をも知れぬ命で鉄人との再会を願っていた。正人は高校を中退し、兄を探しに東京へ!
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