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イズミ少年の漫画日記

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第25回 2009/10/27
ムラマサと70年代風俗
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プロフィール:泉麻人
1956年東京生まれ。慶應義塾大学卒業後、週刊TVガイド編集部勤務を経て、フリーのコラムニストに。東京をテーマにした著書が多い。漫画関係の著書では赤塚不二夫作品の魅力にふれた『シェーの時代―「おそ松くん」と昭和こども社会』(文春新書)がある。2005年、気象予報士の資格を取得。

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2009/09/15
第22回 任侠、アングラ、深夜放送の香り
ホモホモ7(みなもと太郎) その2


ホモホモ7
深夜ラジオと同質の新しい時代の空気が感じられた
(『ホモホモ7』より)©みなもと太郎

 「ホモホモ7」の魅力は、ギャグ漫画と劇画のコラボレーション……なんてことを前回書いたけれど、その辺がシナリオの方でも、一種“確信犯”的にネタばらしされているのが面白い。たとえば、長官が宿敵レスレス女隊員の写真をセブンに差し出すときに、まず雑なラクガキタッチのやつを見せる。

「もっと劇画調のがあるんでしょ? おだしなさいヨ」

 セブンに指摘されると、次のカットに、トイレで盗撮したと思しき、下着をさげたセクシーな劇画タッチのレスレス嬢のスナップ――が現われる、といった具合。前回ふれたように、当時のマガジンは「ホモホモ」のページの前後に「パピヨン」のようなマジな劇画作品が掲載されていたから、こういう劇画ブーム自体を茶化したオアソビが、より効果を博したに違いない。

 また、ベッドシーンで、ギャグ漫画タッチで描かれた裸のセブンの下半身の方は見せず、向かい合った相手の女に「きゃー、そこだけ劇画調!」といわせている――シャレた場面も見受けられる。

 前に“007のパロディー”と簡単に評したけれど、それに加えて高倉健や藤純子の東映任侠映画の影響も見てとれる。所々に唐獅子牡丹調のト書きが織りこまれ、着流し姿のセブンとともに花札のカットがちりばめられている。健さんの任侠映画、横尾忠則のイラストレーション、寺山修司のアングラ芝居…そんな時代風景が浮かびあがる。つまり、当時中学生だった僕らよりもちょっと上の、学生運動に熱を燃やした団塊の世代をターゲットにした作品だったのだろう。

 場面でしばしば使われる、任侠映画やSMプレイの細かい知識こそなかった僕らも、全般に漂うセンスには意気投合できるものがあった。ホモホモ7を再読して、改めて思い浮かんできたのは、あの頃のラジオの深夜放送的な景色である。

 ちなみに、何度も資料に使っている僕のオリジナルのベストテン帳――漫画のランキング表の上段にはヒット曲のベストテンが記されていて、ホモホモがランクインしている70年末から71年初めにかけては、「生きがい」(由紀さおり)、「京都慕情」(渚ゆう子)、「知床旅情」(加藤登紀子)、「花嫁」(はしだのりひことクライマックス)……といったあたりが上位に並んでいる。この辺は、TVよりもラジオの深夜放送で頻繁に流れていたナンバーだった。真夜中のラジオで聴いた、「オールナイトニッポン」のカメ(亀渕昭信)のDJなんかがリアルに回想されてくる。

 ホモホモのケーハクなセンスは、その当時のカメさんのキャラにも通じるところがあったし、リスナーが寄せた創作コントがウリモノだった野沢那智&白石冬美の「パックインミュージック」でも、ホモホモ調の作品がよく紹介されていた。そういう深夜ラジオと同質の、新しい時代の空気がみなもと太郎の作品には感じられた。

 中学のクラスで、あるときから「ホモ」や「レズ」のフレーズが浸透するようになった(男子二人でいるとホモホモコンビと指摘され、エヅカ君という男にレズカの呼び名が付いた)おぼえがあるけれど、これもおそらくホモホモ7が発端だろう。森永のホモ牛乳が笑い話のネタになったのも、この頃からと思われる。

 ところで、コミックス(完全版)の巻末に、69年に「ビッグコミック」に持ちこんでボツになったというホモホモの原型作が載っていたが、これを読むと当初は「レスレス7 喜々一発」の表題で、主人公のホモホモには11(イレブン)の番号が当てられていたようだ。

 しかし、時代がもう数年ズレていたなら、テレ東の夜更けの時間帯あたりでアニメ化されて、ウラ「ルパン3世」的な人気番組になっていたのではないだろうか…。(いま、リメイクしてもけっこうイケるような気がしますが)


ホモホモ7「完全版」
『ホモホモ7「完全版」』
みなもと太郎 各315円(税込)

1970年から71年にかけて「少年マガジン」に連載された伝説の爆笑・ギャグ・スパイパロディーマンガ待望の完全版! スパイアクションをはじめSF・ヤクザ映画のパロディがてんこ盛りです! 「ほれちゃならない非情の世界 男一匹なに泣くものか 空をあおいで涙をかくす ホモホモセブンの心意気。」
コラム関連目録 みなもと太郎

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