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イズミ少年の漫画日記

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第25回 2009/10/27
ムラマサと70年代風俗
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プロフィール:泉麻人
1956年東京生まれ。慶應義塾大学卒業後、週刊TVガイド編集部勤務を経て、フリーのコラムニストに。東京をテーマにした著書が多い。漫画関係の著書では赤塚不二夫作品の魅力にふれた『シェーの時代―「おそ松くん」と昭和こども社会』(文春新書)がある。2005年、気象予報士の資格を取得。

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2009/09/01
第21回 シュールギャグの原点
ホモホモ7(みなもと太郎) その1


ホモホモ7
ギャグと劇画のコラボレーション
(『ホモホモ7』より)©みなもと太郎

 僕の手元に少年マガジンの71年1号(発売は70年の暮れ)がある。これは後から「まんだらけ」あたりで入手したものではなく、オンタイムで買って保存していたものだ。

 表紙は派手な黄色の地に、谷岡ヤスジの「ガキ道講座」のムジドリが「またショーガツ~」と叫んでいるカットが描かれ、巻頭のグラビアは大伴昌司の企画構成によるニューヨーク貿易センタービル(建設中)の紹介、漫画ページのトップはフランス小説をもとにした江波じょうじの脱獄アクション「パピヨン」が“50ページ新連載”の謳い文句で飾っている。他のラインナップは「巨人の星」「ワル」「アシュラ」…といったところで、モノクロの特集ページにも大伴の企画(監修·構成は真崎守)による「現代まんがの誕生」という、読みごたえのある漫画史が掲載されている。

 僕がつげ義春の「ねじ式」に魅かれたのは、この特集が発端だったことをよくおぼえている。マガジンの誌面づくりが、総合情報誌としてもピークにあった頃の一冊といえるだろう。さて、そんな誌面で「パピヨン」の次のページに収まっているのが、みなもと太郎の「ホモホモ7(セブン)」。当時、「ガキ道講座」とともに斬新なインパクトを放っていたギャグ漫画であった。

 ケーハクな諜報部員·ホモホモ7の前に、毎回“レスレス”と名乗ったセクシーな女性スパイ軍団が現われてドタバタアクションが繰り広げられる――という、いわば007をパロッたギャグ漫画なのだが、しばしば織りこまれる精密な劇画タッチのカットがこの作品のウリモノだった。1、2点だけ劇画調のコマを使って驚かせる…みたいな手法は赤塚不二夫なども試みていたけれど、「ホモホモ」の場合は“ギャグと劇画のコラボレーション”が前提になっていて、ともかく両者のギャップが淒まじい。

 セクシーなレスレス軍団は、着こなしたトレンチコートのデザインまで精彩に描かれ、SMまがいの下着をつけたシーンでは胸の谷間や臀部のフォルムまでリアルに表現され、一方そこに現われたホモホモ7は、その後のヘタウマ調を思わせる粗雑な画風で、それがまた一転してゴルゴ13調のハードボイルドな風貌に様変わりしたりする。

 単にデタラメをやっているわけではなく、一連の変化のリズム感が秀逸なのだ。90年代以降のナンセンス、シュールと評価されたギャグ漫画のセンスがすでに感じられる。

 キャラクターでとくに好きだったのが、7のボス役を務めるハゲ頭の長官。このボケツッコミのキャラも、劇画調のカットでは老年期のショーン·コネリー(当時のコネリーは若かったが)のようなシブいシニア顔に変貌する。この男が絡んだ大好きな場面が一つ、頭のなかにこびりついていた。

 コミックス(ホモホモ7 完全版)を再読すると、あったあった… それは僕が保存しているマガジンの次の号と思しき回。正月早々、レスレス一派の偵察のため、「仮面の忍者赤影」の白影ばりに大凪に身をくくりつけて空に舞い上がった7が、民家に落下して出火する。実はそこ、レスレスたちが忍びこんで爆薬を仕掛けたハゲボスの家だったのだが、のほほんと散歩に出ていたこの男、「正月そうそう家をやくのはどこのバカだろう わしゃ火事を見るのがだいすきなんじゃ」なんていいつつ見物にいく。火事場がわが家、とわかったカットで、7が屋根に上って纏を手に江戸の火消し男を演じている――こういうブラックなオチがたまらない。

 僕が当時記録していた人気漫画のベストテン(週1ペース)によると、ホモホモ7は70年11月にランクイン、71年3月初めの欄には“完結”と記されているから、ほぼ半年くらいの短い連載だったのだろう。しかし、作者みなもと太郎の名とともに、この漫画、2¸3年くらいはやっていたような、強い印象が残っている。


ホモホモ7「完全版」
『ホモホモ7「完全版」』
みなもと太郎 各315円(税込)

1970年から71年にかけて「少年マガジン」に連載された伝説の爆笑・ギャグ・スパイパロディーマンガ待望の完全版! スパイアクションをはじめSF・ヤクザ映画のパロディがてんこ盛りです! 「ほれちゃならない非情の世界 男一匹なに泣くものか 空をあおいで涙をかくす ホモホモセブンの心意気。」
コラム関連目録 みなもと太郎

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