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イズミ少年の漫画日記

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第25回 2009/10/27
ムラマサと70年代風俗
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プロフィール:泉麻人
1956年東京生まれ。慶應義塾大学卒業後、週刊TVガイド編集部勤務を経て、フリーのコラムニストに。東京をテーマにした著書が多い。漫画関係の著書では赤塚不二夫作品の魅力にふれた『シェーの時代―「おそ松くん」と昭和こども社会』(文春新書)がある。2005年、気象予報士の資格を取得。

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2009/08/18
第20回 サッカーと青春ドラマの時代
ハリスの旋風(ちばてつや) その4


ハリスの旋風
サッカーの採用は、
漫画界でもかなり早い方だろう
(『ハリスの旋風』より)©ちばてつや

 今回、コミックスを読んでいて、物語の後半の方はまるで当時の記憶がなかった。この時期のマガジンは「ウルトラマン」の怪獣特集に積極的だったから、毎週買っていたはずなのだが、グラビア頁の怪獣写真なんかを切り抜いてスクラップ帳に貼り付けるだけで満足していたのかもしれない。よって、これほど国松がサッカー部で活躍していた(コミックス後半の6、7、8巻)とは、ちょっと意外であった。

 わが国では、釜本、杉山らのスター選手の出現によって66年頃からサッカー人気が昂まる。TVドラマでは、65年の「青春とは何だ」に始まる日本テレビ系のシリーズ第2弾「これが青春だ」(66年11月~)において、前作のラグビーに変わってサッカーが取りあげられ、一段と人気が浸透していった。その年、僕は小四だったが、四、五、六年の担任先生が学年の選抜メンバーを率いてサッカーチームを結成、対外試合をやっていたのを思い出す。肥満児で鈍足だった僕はメンバーに入れず、その悔しさも手伝って、中学でサッカー部に入部したのだ。

 しかし、サッカーネタの漫画といえば、僕の世代は「赤き血のイレブン」が最初で、67年当時の「ハリスの旋風」のサッカーの採用は、漫画界でもかなり早い方だろう。混血の秀才児・サハーラ東郷の熱烈な誘いによってサッカー部に入った国松は、一時期、いつものクセで美少女(榊原ナナ。白木葉子タイプ)に魅かれてバレエ(ボールではない)部なんぞにも入ったりするが、終盤はサッカー選手として学園をかきまわす。途中でポジションは替わるものの、当初任せるのはゴールキーパー。この辺はおそらく、漫画的に動作が表現しやすい、という意図だろう。

 本格的なサッカー漫画ではないから、「小林サッカー」ばりのトンデモプレーの連続だが、いかにもその時代を表わしているのが、フォーメーションだ。監督の岩波先生(剣道部からこちらの部に移る)がメンバーを告げる場面で、ライトウイング、レフトウイング、センターフォワード、ライトインナー、レフトインナー…といっている。フォワードが5人、ハーフ(МF)が2人、ディフェンスが3人――俗にWMといわれた徹底的な攻撃シフトである。いまではちょっと考えられないけれど、これは1950年代頃のハヤリのスタイルで、僕が入った中学のサッカー部も途中までこういう編成をとっていた。(僕は一応ライトウイングだったが、ましなセンターリング一つあげられず、さらにその外のラインズマンをやらされることの方が多かった)

 そんなサッカー部の国松のもとに、カスタードプリン・ハリスなる人物が現われる。氏はハリス学園創立者・バームクーヘン・ハリスの孫にあたる男で、アメリカの本校を任されている。(実は今回読むまで、現役の園長=バームクーヘンと思いこんでいた)

 ワガママなカスタードプリンと国松は、当然のごとく衝突し、国松は放校処分を命じられる。それに抗議して、番長、サハーラ、殿岡、イヤな奴だった二階堂までが、多勢の生徒とともに教員室へ押しかける場面は、先の「これが青春だ」的な学園ドラマの一コマを思わせる。結局、カスタードは放校処分を取りやめ、国松をアメリカ本校へ留学させることを決意する。

 国立競技場における宿敵・三和田学院との試合に勝利した翌日、国松は番長ら学友たちに見送られて、羽田からアメリカへと飛びたっていくわけだが、飛行機がパン・アメリカン航空というのもこの時代らしい。

 ふーむ、「ハリスの旋風」はこんなエンディングだったのか…。終盤の展開は少々あわただしい感じがしないでもないが、もう次作(あしたのジョー)の準備に追われていたのだろう。


ハリスの旋風
『ハリスの旋風』
ちば てつや 各315円(税込)

サッカー部に復帰した国松は、さっそく練習場をめぐって柔道部員たちと大乱闘! そこへ居合わせた学園会長であるカスタード・プリン先生をそうとは知らず、めちゃめちゃにやっつけてしまった! ご立腹のプリン先生は国松に退学通知を突きつける。退学には慣れっこだと学園を去ってゆく国松。変わりにサッカー部の存続だけは許してほしいと言い残して。仲間たちは必死で国松の退学を撤回させようと学園に猛抗議するが……!?
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