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イズミ少年の漫画日記

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第25回 2009/10/27
ムラマサと70年代風俗
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プロフィール:泉麻人
1956年東京生まれ。慶應義塾大学卒業後、週刊TVガイド編集部勤務を経て、フリーのコラムニストに。東京をテーマにした著書が多い。漫画関係の著書では赤塚不二夫作品の魅力にふれた『シェーの時代―「おそ松くん」と昭和こども社会』(文春新書)がある。2005年、気象予報士の資格を取得。

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2009/08/04
第19回 番長のインパクト
ハリスの旋風(ちばてつや) その3


ハリスの旋風
身の丈が国松の3倍はある
(『ハリスの旋風』より)©ちばてつや

 「ハリスの旋風」のサイドキャラクターのなかで、なんといっても強烈な印象を残しているのが「番長」である。コミックスで初めて登場するのは10話目、伊野ら不良グループの親玉として現われるその姿は、チビの国松のおよそ3倍(カットによっては5倍くらいにもなっている)の身の丈で、顔一面に×印のキズが描かれ、ともかくインパクト満点だった。

 盲目剣士の柳が仕掛ける格好で、やがて国松は番長と富士見河原で決闘を取り行うことになる。決闘をめざして国松は剣道の特訓に励むわけだが、この番長との対決、意外にも国松があっさりと勝利し、以降番長は漫画の表舞台にはほとんど登場しなくなる。もっと国松と番長の絡みは頻繁だったイメージをもっていたのだが、その辺はアニメ版で根着いた印象なのかもしれない。

 国松の良き理解者のような脇役にまわった番長は、新拳闘部設立の際、野球部の殿岡や剣道部の鬼塚らとともに久しぶりに表舞台に現われ、サッカー部で天狗になった国松に喝を入れるべく、富士見河原でリターンマッチに臨む。もうこの時期は漫画の終盤だから、一種のオマージュ的演出、ともいえるだろう。復活した番長は、国松に向かって「おんし」(おぬしの訛り)という物言いをやたらと使っているけれど、このフレーズ、初期の番長は使っていないから、アニメ版で浸透したものなのかもしれない。

 リターンマッチで番長は国松をメタメタに叩きのめすものの、それは友情あふれる愛のパンチというもので、もはやこの頃の番長にヒール(悪役)の匂いはない。悪か善へとスライドしていくキャラクターの雰囲気は、「あしたのジョー」でいえば、マンモス西の役柄と重なり合うところもある。

 ちなみに「番長」、漫画ではほとんどその呼び名で語られているけれど、初期の頃、一度だけ柳が「福本」という苗字を明かしている場面がある。

 その他の印象的なキャラクターについて触れておこう。拳闘部のアコギな主将として登場する佐々木は、剣道部の鬼塚にもちょっと似た「ジョー」のウルフ金串を思わせる鋭角的な顔立ちをした男で、黒く塗り潰された逆三角形の目が亡霊のような無気味さを醸し出している。拳闘部の新人部員・小山は、小さくて気弱そうな風体にして、強烈なパンチを繰り出す曲者で、これは「ジョー」の青山の原点といえるだろう。

 そして、後期の国松の活躍の場となるサッカー部、ここで彼の前に颯爽と現れるライバルがサハーラ東郷。その名のとおり、黒い肌をした混血児で、スポーツだけでなく頭脳も明晰ときている。サハーラはアフリカの砂漠を連想させるが、この時代のサッカーというと、ブラジル出身のイメージかもしれない。

 サハーラも当初はクールなイヤな奴として登場するが、国松の父親がケガをして家業のラーメン屋が傾いたときに、デパート配送のバイトに励む国松を助けて、グッとくる人情家の一面を見せる。サハーラが善人に転向した後、新たなヒールとして出現するのが二階堂健という男。こいつは、Vゾーンを編みこんだ当時ハヤリのスポーツシャツを着て、ロープを使いこなして番長一派を一網打尽にしてしまう…という縄師のような技術をもっている。

 へー、次は奇術部の章にでも移るのか、と思っていたら、この二階堂もサッカーの達人で、サハーラのお株を奪う見事なボールリフティングを披露する。そして二階堂、「巨人の星」の花形満ばりに、スポーツカーを駈ってグランドに乗りつける。ま、ハリス学園は中高一貫制のようだから、最上級生とすれば免許取得は可能だろうが、この男、風貌も20代後半くらいに大人びている。

 しかし、サハーラ、二階堂、この辺のサッカー部時代のキャラクターの記憶はほとんどなかった。


ハリスの旋風
『ハリスの旋風』
ちば てつや 各315円(税込)

学校は大嫌い。毎日けんかと大食いに明け暮れて、近所の子どもはみんな俺様の子分! その名も石田国松!! 悪さばかりしている国松のもとへある日、名門ハリス学園の園長を名乗る老人が現れ突然入学するようにと迫ってきた。理由も分からないまま、しぶしぶ通うことになった国松。そこには腕っぷしのいい奴らがわんさかと…。次々に彼らをなぎ倒す国松はいくつもの運動部から勧誘を受け、うまい弁当を交換条件にすべての部に入部してしまう…。
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