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イズミ少年の漫画日記

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第25回 2009/10/27
ムラマサと70年代風俗
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プロフィール:泉麻人
1956年東京生まれ。慶應義塾大学卒業後、週刊TVガイド編集部勤務を経て、フリーのコラムニストに。東京をテーマにした著書が多い。漫画関係の著書では赤塚不二夫作品の魅力にふれた『シェーの時代―「おそ松くん」と昭和こども社会』(文春新書)がある。2005年、気象予報士の資格を取得。

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2009/07/21
第18回 60年代に電通マンが仕掛けた漫画とお菓子のタイアップ


ハリスの旋風
「おせんにキャラメル チョコレート
ハリスのガムにのしいかちゃん」
と鼻歌をうたう国松
(『ハリスの旋風』より)©ちばてつや

 前回の原稿を書いた後、先頃発刊された新書「サンデーとマガジン」(大野茂・著 発売元は光文社。小学館と講談社の中を取ったわけではなかろうが)を読んでいたら、「ハリスの旋風」にまつわる興味深い裏話がいくつか載っていた。

 この企画はハリスガム担当の電通マン(この人物は後にディズニーランドの日本進出にも尽力したらしい)から持ちかけられたもので、当初「石田国松が毎号ハリスのウリモノのフーセンガムをふくらませるシーンを入れる」との取り決めがあったらしい。無論、作者のちばてつやはそれを拒み、漫画版にはあまりフーセンガムのシーンは出てこないけれど、そういえばTV版の方では国松がしばしガムをプーッとふくらませていた記憶がある。

 そして、もう一つ「なるほど…」と思ったのは、連載が始まってまもなく、ちばが結婚、新婚旅行のため長期休載…という記述だ。長期休載するほどの新婚旅行がよく許された、とも思うけれど「なるほど」と頷いたのはそういうことではない。65年4月にスタートした割には、66年のペナントレースで活躍する巨人の堀内の話題がかなり早い回で出てきたり、その数話後に国松が作る壁新聞のなかでTVアニメ開始(66年5月)の告知がされていたり、どうも時代計算がしっくりこない…と思っていたのだが、やはり“ブランク”が挟まっていたのだ。

 ま、その辺はマガジンのバックナンバーをコマメに調べれば明確になることなのだろうが、ちょっといまはその余裕がない。

 さて、物語の方は、当初野球部に入った国松が、ヤミウチ事件をきっかけに剣道部へと移籍する。その後、拳闘部にも入ったりするわけだが、当時マガジンより先行して月刊誌の「少年」を愛読していた僕は、この辺の展開に関谷ひさしの「ストップにいちゃん」に似たものを感じた。各部をかけもちして活躍する「ストップ――」の主人公・南郷勇一も、人情に厚い反面、オッチョコチョイの剽軽(ひょうきん)者で、なおかつ気弱で賢い弟がいる…という、国松とよく似たキャラクターだった。「ストップ――」は野球がメインだったけれど、拳闘や柔道(剣道もあったと思う)に挑む話も印象に残っているし、こちらもやはりガールフレンドが新聞部で活躍していた。

 67年まで続いた「ハリス――」は、時流に乗って後期はサッカー部で大暴れすることになるわけだが、イメージに強く残るのは、やはり剣道部の時代である。僕の世代は、剣道モノというと「おれは男だ!」の前に、この「ハリスの旋風」がある。

 剣道をかじりはじめた国松の前に、まず現われるライバルは柳という盲目の剣士。横笛を吹くあやしい雰囲気のこの男、目をやられた原因は番長とのケンカと判明、国松は番長との決闘を目当てに、剣道の練習に励むことになる。

 千葉の九十九里浜での合宿のシーンは、コミックスを再読しながら懐かしい思いに浸った。割烹着姿の味のある合宿所のおばちゃん、闇げいこの場面、気弱な先輩部員・塩原との心温まる友情…心あたりのあるシーンの連続だった。

 この合宿に繰り出す前夜、「おせんにキャラメル チョコレート ハリスのガムにのしいかちゃん」と鼻歌をうたいながら荷造りする国松のカットがあり、千葉へ向かう列車のなかでも、国松はフーセンガムをふくらませ、ハリスのチョコボールを見せびらかしている。(TV化が迫る頃の話だから、作者もサービスしたのかもしれない)


 そして、合宿の集合場所を引率の岩波先生はこう告げている。「八時までに両国駅へこいっ」と。そう、この当時、外房へ行く列車の始発駅は両国だったのだ。たぶんもう珍しくなってはいたと思うが、彼らは蒸気機関車が牽引する列車(総武本線)に乗って九十九里浜(飯岡)へ向かう。ちなみに飯岡駅前から銚子行のボンネットバスに乗っているから、この合宿所は屏風ヶ浦のあたりだろう。最近はこういう些細な地理が気になってしまう。


ハリスの旋風
『ハリスの旋風』
ちば てつや 各315円(税込)

学校は大嫌い。毎日けんかと大食いに明け暮れて、近所の子どもはみんな俺様の子分! その名も石田国松!! 悪さばかりしている国松のもとへある日、名門ハリス学園の園長を名乗る老人が現れ突然入学するようにと迫ってきた。理由も分からないまま、しぶしぶ通うことになった国松。そこには腕っぷしのいい奴らがわんさかと…。次々に彼らをなぎ倒す国松はいくつもの運動部から勧誘を受け、うまい弁当を交換条件にすべての部に入部してしまう…。
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