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イズミ少年の漫画日記

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第25回 2009/10/27
ムラマサと70年代風俗
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プロフィール:泉麻人
1956年東京生まれ。慶應義塾大学卒業後、週刊TVガイド編集部勤務を経て、フリーのコラムニストに。東京をテーマにした著書が多い。漫画関係の著書では赤塚不二夫作品の魅力にふれた『シェーの時代―「おそ松くん」と昭和こども社会』(文春新書)がある。2005年、気象予報士の資格を取得。

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2009/02/24
第5回 トリオギャグ漫画の傑作
「ブラック団」(つのだじろう)(その1)


ブラック団TVに紛れこむ3人組
TV局に紛れこむ3人組(『ブラック団』より)
 ©秦企画

 少年サンデーを読みはじめた頃、まず最初にめくるのは「おそ松くん」、そして「オバケのQ太郎」「九番打者」「ブラック団」…といった順番だった。前回「伊賀の影丸」はあまり熱心に読んでいなかった…と書いたけれど、そう僕はギャグ漫画好みの少年だったのだ。

 「ブラック団」は、そんな“味のある脇役”のようなポジションの作品として記憶されている。主人公はドジな3人組のギャング――シルクハットにスーツをカチッとキメた日活アクション俳優調の「親分」と、ヤセた角刈り頭の「ジロー」、ハゲデブで突き出た腹にハートマークのヘソを見せた「タロー」――という面々である。ちなみに親分の名は「可藤骨臓」というらしく、ハリネズミみたいに突き立った頭髪を隠すため帽子を絶対に脱がない。ジローは変装の達人、タローはカギ開けの名人、という特技をもっている。そして3人とも、ジャケットの胸にバラの花をつけてシャレている。

 この「ブラック団」の3人編成から、まず思い浮かんできたのは、アメリカTVコメディーの「3バカ大将」だった。ボス格でツッコミ役のモー、ポンコツと呼ばれる小ボケのラリー、ハゲデブで大ボケのカーリー、の3人組がドタバタ喜劇を繰り広げるそれは、ブラック団のキャスティングとよく似ている。もっともその原点はマルクス3兄弟、ということになるのだろうが、この漫画がスタートしたのは1964年11月というから、時期的にみて「3バカ」(63年より日本で放送)が大きなヒントになったのだと思われる。また、ブラック団の後期(66年)の頃に“お笑いブーム”に乗って人気を呼んだ内藤陳率いるトリオ・ザ・パンチ(ハードボイルドだどーのギャグでブレイク)は、どことなくこの3人組のムードが感じられた。

 さて、コミックスを再読してみると、意外にも尺の長い話が多い。1話完結の短い話が連載されていた…という印象をもっていたのだが、一つのエピソードが転じて続く、ストーリー漫画調のスタイルをとっている。たとえば初回の話は、ちょっとした金庫破りのネタの過程で身なし子を金持ちの子と誤って誘拐、その途中に彼らよりさらに上手のギャング団との対決ネタが挟みこまれ、解決後は誘拐した子供に情が移って、3人組が親替りとなって育てていく――といった風に展開していく。この身なし子は「田中サブ」の名をもらって少年探偵団を結成、サイドキャラとして後々まで活躍するのだ。

 そう、ブラック団の重要なサイドキャラといえば、ヒゲトラ刑事を忘れてはならない。三船敏郎風のなかなかシブい顔に、ノラネコのような3本ヒゲを付けたこの男は、これといった活躍をすることもないのだが、3人組の場面に時折ひょこっと顔を出して、味のあるボケ演技を見せている。こういう刑事のキャラクターは「ルパン三世」をはじめとして、その後のギャング、探偵モノの一つの“お約束”となった。

 ブラック団は、時のハヤリ言葉や人気TV番組のパロディーが所々に織りまれているのが、僕らの愉しみだった。当初は東京オリンピック直後の頃だったから、カミナガ、ヘーシング、アベベ、チャスラフスカ…と人気選手をもじったようなフレーズも目につく。TV局に紛れこむ話では、「七人の刑事」をパロった「八人の刑事」の収録現場に出くわして、「てなもんや三度笠」の藤田まことや白木みのる、「三匹の侍」の長門勇、といった実在スターの面々も顔を出している。バカ、カバ、マヌケ、トンマ…と、当時の子供まわりの常套句も多用されている。

 作品の性格柄、007や0011(ナポレオン・ソロ)の小ネタはしばしば使われている。次回はブラック団の時代のスパイブームについて解説することにしよう。


ブラック団
『ブラック団』
つのだ じろう 各315円(税込)

少年のために、名前がそっくりのギャング「ブラツク団」と決戦することになったブラック団。やっぱりいつも失敗ばかりだけど、たまには男を見せなければ! かつて東大の購買部でナンバー1の売り上げを記録したという、ちょっとオトナコドモなギャング団の人情物語。オカシク、ちょっとカナシイ完結篇!
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