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イズミ少年の漫画日記

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第25回 2009/10/27
ムラマサと70年代風俗
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プロフィール:泉麻人
1956年東京生まれ。慶應義塾大学卒業後、週刊TVガイド編集部勤務を経て、フリーのコラムニストに。東京をテーマにした著書が多い。漫画関係の著書では赤塚不二夫作品の魅力にふれた『シェーの時代―「おそ松くん」と昭和こども社会』(文春新書)がある。2005年、気象予報士の資格を取得。

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2009/02/17
第4回 木の葉隠れの科学
「伊賀の影丸」(横山光輝)(その3)


伊賀の影丸木の葉隠れの科学
必殺技は「木の葉隠れ」
(『伊賀の影丸』より)
 ©光プロダクション

 忍者に限らず、少年漫画のヒーローには“必殺技”というのが存在するものだ。影丸の場合はなんといっても「木の葉隠れ」、そしてこれを応用した「木の葉火輪」という火術が宿敵たちを苦しめることになる。

 当時僕らも雑木林の落葉を巻き散らして、木の葉隠れを真似たおぼえがあるけれど、コミックスを再読してみると、単にむやみに術を試みているわけではない。敵の風上にまわる…といった科学的な裏付けがなされていて、とりわけ「火輪」の場合には“炎によって熱せられた空気によって風が生じ”なんていった、ちょっとした物理の知識までが紹介されている。

 僕は、影丸よりももう少し後年に読んだ白土三平の「カムイ外伝」で、冬虫夏草とか日本住血吸虫による宮入病(風土病)とかのマニアックな知識を学んだが、影丸にもそういった自然科学系のウンチクが随所随所に披露されている。「地獄谷金山」の巻には、甲府病の名で先の宮入病らしき風土病も扱われているし、シデムシをはじめとしたマニア好みの昆虫を使った忍術もよく出てくる。難敵・影法師が繰り出す忍法「あげは蝶」の場面などでも、かなり精彩にアゲハチョウが描かれているから、作者の横山は昆虫にも造詣が深かったのかもしれない。

 前回、少年忍者という前提ながら、妙に大人びた影丸の一面について言及したけれど、とりわけ初期の頃の影丸はなんだか実にドライな人間性に描かれている。仲間が斬死しても、涙ひとつ見せず、次の仕事先へと進んでいく。随分あっさりしているなぁ…と思っていたら、後期の方では仲間の死を悼むような言葉を吐いたり、泣き顔のカットも見られるようになってきた。この辺は人気が高まるにつれて、読者の反響などを参考に改められていったものなのかもしれない。

 と、作品論についてはこのくらいにして…子供時代の「伊賀の影丸」まわりの思い出で一つ、ふれておきたいことがある。当時、サンデー誌上の漫画とともに、TVでやっていた影丸の人形劇の印象が強く残っているのだ。確かスポンサーは、三立製菓という菓子パンなんかを作っていたメーカーで、テーマ曲はこんな感じだった。

 ♪カゲー ハッ カゲー ハッ
  影丸が行く ハーッ

 ハーッ、と太い男の声で合いの手がやたらと入る唄で、この後に「木の葉隠れ」などの術を織りこんだ歌詞が続く。文明堂のカステラCM並みに、吊り下げたピアノ線が露骨に見える粗っぽいマリオネット劇で、何チャンネルのどんな時間帯にやっていたのかもはっきりしないが、記憶に残っている。この三立製菓から影丸キャラの食品が出ていたかどうかは定かでないが、タカオカのマンガチョコという、チューブ入りのチョコレート菓子があって、いくつかの漫画キャラを採用した景品のシールのなかに影丸のやつもあったはずだ。我が家の柱に貼りついていた景色をぼんやりと憶えている。

 そして、僕は一度だけ横山光輝先生のお宅に伺った経験がある。当時の漫画誌の欄外には作者の住所が奔放に記載されていたが、少年時代に押しかけたわけではない。80年代の初め、TVガイドの編集部に勤めていたときに、何かの番組評のコラムを依頼して、原稿を受け取りに伺ったのだ。

 場所は池袋の西方の千早町。もうかなり老齢になられた先生と対面して、熱中していた鉄人の話題などをしばし交わした。雑然とした仕事場に、鉄人28号や伊賀の影丸のコミックスがたわわと積みあげられていた景色が印象に刻まれている。あれは確か、お宅が火災に見舞われて、不慮の死を遂げられるほんのちょっと前の出来事だった…。


伊賀の影丸
『伊賀の影丸』
横山 光輝 各315円(税込)

闇一族の目的を探るため、山城の国に派遣された影丸と村雨五兄弟。しかし、すでに待ち伏せていた闇一族のために味方の数馬が倒れ、あやしい武士を追った源太郎は捕われてしまった。闇一族の狙いは何か? そして影丸たちに勝利はあるのか? 忍者大長編コミックス、完結!
コラム関連目録 鉄人28号 原作完全版

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