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サラリーマン漫画家のまんが修行道

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プロフィール:石川勝哉 (写真の黄色くないほう)
東京都の片隅に生まれ、いろいろやってるうちに現在に至る。RIP SLYMEの単行本「RIP STYLE」に渋谷直角との共著(変名名義)でマンガを描かせていただいたり、第308回(2005年12月期) ヤングマガジン月間新人漫画賞にて、佳作をいただいたのをきっかけにマンガの世界に足を踏み入れる。角川書店刊『へっポコ!』全1巻、渋谷直角との共著にて、絶賛発売中です!コチラもぜひ読んでネ!

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コラム 2009/11/13
第3回 ギャグマンガ家の身近に起きた出来事


ギョギョ~~~~~~~!!(つま先のほうから食われながら、サメの口から顔を出した状態を利用してさかなクンのモノマネで)。

毎度、何のことだかよくわからない挨拶からはじめてみました。
「KATANA」にて、「ブスが来たりて」というマンガを描かせていただいております、石川勝哉と申します!名前だけでも覚えて帰ってください。


さて、ギャグマンガ家たるもの、普段から「なにかネタになるような、面白いことはないか!?」と考えているものです。
「西に新しいおもしろスポットあり(男性器にしか見えない建造物など)」と聞けば出向き、「東におもしろい物が売っている(女体に見える野菜など)」と聞けばその店の暖簾をくぐる。
そんな風にモックンを気取って「西へ東へ」を口ずさみながら最新の情報をキャッチしに行ったり、キャッチしそこねたりしているワケです。

しかしそんなおもしろいスポットや出来事というのは、得てしてキャッチしに行ったときこそ起こらず、急に日常生活で起きたりするものです。
そして、世間が持つマンガ家へのイメージ通り、「意外と人見知りする」というシャイ・ボーイな特徴を持つ私は、見知らぬ人に図々しくその場で突っ込みを入れる事もできずに、「あの時こうしていたら、もっとおもしろくなったのでは」と後悔することもしばしばなのです。
今日はそんな、日々修行のサラリーマン・ギャグマンガ家の身近に起きた出来事をいくつかご紹介しようと思います。

■タクシー
不景気の昨今、私もご多望に漏れず残業が深夜に及ぶことがあります。
そんな時はもちろん、タクシーを利用することになります。
運よく感じのいい運転手さんに当たると、それだけで少し疲れが取れるような気がするものです。

先日乗ったタクシーの運転手さんのファーストインプレッションはまさにいい感じで、
「ドアお閉めします、よろしいでしょうか?」
「では、発車いたします」
と行き過ぎるぐらい丁寧な対応をする運転手さんでした。

「発車て。」

そう思いながらも、行き先を告げたあと
「道はお任せします。」
と言いながら、私は家路までささやかな休息を取るべく、心地よく目を閉じたのでした。


走ってしばらく経つと、

「んっ・・・?」
鼻腔をくすぐる妙な違和感に、私は一度閉じた目を開けて、再度その違和感を確認しました。

いやいやいやいや、そんなはずはない。

あんなにも丁寧な運転手さんである。

私はもう一度目を閉じて、その違和感をやり過ごそうと試みました。

しかし、現実は残酷です。
その違和感の正体たる匂いは、先ほどとはまた違う色合いで、しかしより凶暴なものとなって私の鼻を襲うのでした。


間違いない。これは、現実だ。


修行中

この運転手、すかしっ屁しやがった。


ここで、
「おい、運転手!てめぇ屁ぇこきゃあがったな!」
と江戸弁ででも突っ込めば、
「いやいやお客さん、お断りしたじゃあねぇですか。『発射します』、ってね。」
「ズコ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ッ!!!」
とでもおあとがよろしくなっていたかも知れないですが、シャイ・ボーイであるところの私がそんな事を言えるはずもなく、車中には依然として沈黙が続くのでした。

あんなにも丁寧で、「お客様は神様です」とでも顔に書いてそうな運転手さんの、まさかのスカンク対応。


「なるべく鼻で息をする」というひどく消極的な回避策に打って出た私を乗せて、タクシーは家路へ急ぎます。

そう、排気ガスを撒き散らしながら・・・(なんかうまい事まとまった)。


■微熱の少年
先日、近所のスーパーに買い物に行った時のことです。

一人の少年が、なにやらお菓子コーナーで真剣な顔で立っていました。
まぁ、よくある光景です。

しばらくして、私が精肉コーナーで物色していると、またしても先ほどの少年が真剣な面持ちで肉を眺めています。

「・・・?」
少しだけ、疑問に思いました。
お菓子なら分かりますが、周りに親らしき大人の姿は無く、恐らく一人でスーパーに来ているであろう少年が生肉を食い入るように眺める姿は、多少違和感がありました。

その後、私は買い物を続けましたが、何故かことごとくその少年と店内で出会うことになったのです。

ある時は乳製品コーナーで、ある時は冷凍食品コーナーで。
そして、レトルトコーナーで・・・。
もうこうなってくると違和感では済まされません。

ここで、私にあるひとつの予想が頭に浮かびました。

「こいつ・・・万引きでもしようとしてるんじゃあなかろうか?」

なんというか、店員の死角となるような万引きスポットをリサーチしているのでは!?
そんな風に思いました。
しかし、どうも見た感じそんな悪そうな少年には見えません。
純朴で、むしろ引っ込み思案な印象すら受ける素直そうな少年でした。

私は俄然その少年に興味が沸き、その少年を観察することにしました。
幸いにも私は、既に今日のお目当ての品物をカゴの中に揃えていましたので、まさしく個人授業とばかりに付きっきりで少年を観察できたのでした。


少年の導線は、まさに予想のつかないものでした。
ある時は鮮魚コーナーへ。
ある時は豆製品コ-ナーへ。
そしてまたある時はお惣菜コーナーへ・・・。

なんの脈絡のないそんな少年の動きに、徐々に飽きてきたその時です。
少年は意を決したかのようにひとつの品物をムンズと掴むと、レジに向かいました。

「やはり、万引きではなかったのだ・・・!」
私は少しだけ安心して、少年がなにを買おうとしているのかを確認すべく、一緒にレジに並びました。

修行中
そして、よく確認してみると、少年の手には・・・


修行中

何故か回鍋肉(ホイコーロー)の素が握られていました。

・・・もしかすると、少年は悩んでいたのかもしれません。
「今日もお母さん、遅いからね。お腹がすいたらこれでなにか食べなさい。」
そう言われて、渡された300円。
そのあまり裕福とは言いがたい夕食の値段設定に、一時は「やった~!お菓子食べよう!」と、子供ならではのバカっぷりで衝動的にお菓子コーナーへ向かった少年。
しかし、
「育ち盛りのオレが、そんな食生活でいいのか!?・・・否!」
とばかりに悩んだ挙句、購入した回鍋肉(ホイコーロー)の素。

そう思うと、少年を万引き犯として疑いをかけた自分が恥ずかしくなり、むしろこの現代社会が生み出した、泣けてきそうな感動ストーリーなのではないかと思えてきたのでした。

私は、自分のレジの順番を待ってお金を払いながら、少年が元気良く店を出て行くのを横目で見送りました。
私も、夏が終わって少しだけ冷たくなった夜風をほほに受けながら、どこか悲しい笑みを浮かべながら夜空につぶやくのでした。


「少年、その回鍋肉(ホイコーロー)の素、野菜とお肉は別売りだぜ・・・。」


シャイ・ボーイである私は、少年に事実を伝えることも叶わず、少しだけおもしろいものを見れたことに、ちょっとだけスキップ気味で家路についたのでした・・・。



■宣伝
さて、そんなシャイ・ボーイであるところの私、石川勝哉「ブスが来たりて」の電子書籍コミックスが12月に発売されることが決定いたしました!
詳細は近々、eBOOK JAPANさんのホームページや、「KATANA」誌上でお知らせできると思いますので、ご興味のある方はぜひ、よろしくお願いします!
ワンクリックで救えるサラリーマンマンガ家の命があります!


KATANA
『KATANA』
 各105円(税込)

「そして――子連れ狼 刺客の子」(小池一夫&森秀樹)、「柳生連也武芸帖」(とみ新蔵)の2大時代劇画が並ぶ強力連載。名作漫画館は杉本伶一&加藤伸吉「国民クイズ」と石ノ森章太郎「八百八町表裏 化粧師」。気鋭作家による大好評描き下ろし「工場虫」(見ル野栄司)、「ブスが来たりて」(石川勝哉)に加え、コラム連載「イズミ少年の漫画日記」(泉麻人)、「オトナのマンガ探検学」(中野晴行)、「漫画家 夢の工房」(すがやみつる)も充実。
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