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まんが最前線 インタビュー

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プロフィール:中野晴行(なかの・はるゆき)
1954年生まれ。和歌山大学経済学部卒業。 7年間の銀行員生活の後、大阪で個人事務所を設立、フリーの編集者・ライターとなる。 1997年より仕事場を東京に移す。
著書に『手塚治虫と路地裏のマンガたち』『球団消滅』『謎のマンガ家・酒井七馬伝』、編著に『ブラックジャック語録』など。『マンガ産業論』で日本出版学会賞奨励賞、日本児童文学学会奨励賞を、2008年には『謎のマンガ家・酒井七馬伝』で第37回日本漫画家協会賞特別賞を受賞。2009年、「まんがのしくみ」連載を電子書籍化した『まんが王国の興亡 ―なぜ大手まんが誌は休刊し続けるのか―』をリリースしたのちに、『マンガ進化論』と改題して書籍出版。
中野晴行執筆の連載コラム
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インタビュー 2010/05/01
「非実在青少年」規制に関して作家・川端裕人さんに聞く


 18歳未満に見えるマンガやアニメのキャラクターを「非実在青少年」とし、「非実在青少年」を「みだりに性的対象として肯定的に描写することにより、青少年の性に関する健全な判断能力の形成を阻害し、青少年の健全な成長を阻害するおそれがある」雑誌や単行本を「不健全な図書類等の販売等の規制」に加えるという東京都の青少年健全育成条例改正の賛否をめぐっての議論が活発である。3月都議会で予定されていた改正案の審議は6月都議会に延期されたが、大阪府などでも同様の条例案が出るなど「表現規制」への動きは逆に強まっているようだ。

 一方で、規制賛成派、反対派の議論はどうもかみ合っていないように思われる。問題点の腑分けが必要ではないか、と考えた我々は、作家であり、ご自身の子どものPTA活動に関わり『PTA再活用論 ──悩ましき現実を超えて』(中公新書ラクレ)などの著書もある川端裕人さんにインタビューをお願いした。



作家・川端裕人氏

――今回の都条例改正については、表現者でありPTAにも関わってきた川端さんはどのようにお考えですか?

川端 健全育成条例をよく読めば、今の条例でもちゃんと規制することができるんです。すでに規制されているものの上に、さらに特定のジャンルを指定して規制の網をかける目的がはっきりしませんね。それをきっかけにして、ある特定の分野に厳しい目を向けるぞ、という決意表明なんですかね。条例改正案をつくろうとしている人の意図がよくわかりません。

――今回の問題に関して言うと、表現者側からは「表現の自由を守れ」というのは聞こえてきますが、「表現者の責任」という声があまり聞こえません。

川端 日本人は表現の自由を手にしてまだ歴史が浅く、権利を守ることに精一杯だった、と言う事もあると思います。また、発言のメディアが、出版社経由・新聞社経由しかなかったので、そういったメディアがオーケイかどうかフィルターをかける形があった。でも、今のようにネットを通じて誰もが表現者になれる時代になると、誰もが責任を問われる可能性がある。今回の条例改正問題はそういう課題を我々に突きつけているのかもしれませんね。

――新聞などを読んでいると、東京都小学校PTA協議会(以下・都小P)が保護者を代表して条例改正を強く推進していて、表現の自由を求めるマンガ家と保護者の間に対立構造があるように語られています。

川端 都小Pというと、名前としては東京都のPTAを代表しているように聞こえますよね。でも、保護者は自分が都小Pに入っているかどうかも知らない方が普通です。自分の学校のPTAに入ること自体、自動的になることが多いですし、ましてや、PTA会費から市区町村のPTA連合や、都小Pに少しずつ会費が納められているなんて、PTA役員をやった人でないとなかなか把握していないと思います。なので、保護者の参画意識はほとんどありません。そう言う意味で、都小P=東京都の保護者代表とされてしまうのは、困ったことです。現役のマンガ家さんの中にもお子さんがいて、PTAに参加されている方がたくさんいらっしゃいますが、その方たちも改正に賛成されているでしょうか。ぼくの子どもの学校でも、過激なマンガが保護者会や学級PTAで問題になったなんて話は全く耳にしません。ほとんどのPTA会員が条例改正についても知らないかもしれませんよ。

――PTA会員の合議で決まったのではないのですか?

川端 保護者会員が全員が集まって意見交換をするというようなことはないですね。PTA役員は区町村のレベルで会合を持つことがあるし、そこから出た代表者は都小Pで会合を持ちます。ちなみにこの代表者はたいてい区町村のPTAのOBで、現役の保護者ではないんですよ。そういった人たちが幹部になって話し合うわけですが、その内容が個々の現場にフィードバックされて、保護者会員が吟味するなんてことは、事実上ないです。知らないところで束ねられて、知らないところで「PTAの意見」が一人歩きしている。そういう制度的な欠陥が今回は出てしまった、と言えるかもしれませんね。しかも、都小Pの場合はすべての市区町村のPTAが参加しているわけではない、という特殊事情もあります。構成員は23区のうちのせいぜい5区くらいと、都下の1村、島嶼部の4島なんです。今回の問題は、「表現者対都小P」という対立構造で見るのならわかるのですが、「表現者対一般保護者」と見るのはおかしいです。

――マンガは伝統的にPTAや親御さんから「子どもが勉強しなくなる」「マンガの真似をして困る」と言われ続けてきましたね。

川端 確かに、子どもを無菌状態で育てたいとか、あるいは、それが可能であると考える人たちがどの時代にもいるのかもしれません。「環境浄化運動」って、すごく字面が恐い活動が、PTAの連合体では伝統的に行われてきていて、それこそ手塚治虫さんたちのマンガを悪書として校庭で焼いた時代もありました。「子どもを守れ」という主張は一種の切り札なんですね。子どものため、と言われると反対をしにくくなる。ところが守るべきとされるのは、18歳未満という漠然とした「子ども」であって、小学生も高校生も一緒くたにしている。小学生と高校生じゃあ、方法も目的も変わって当然でしょう。小学生に関していえば、子どもに見せたくないものは親がきちんと選べばいい。ただ、そのためのレーティングだけは、はっきりしてもらいたいのです。小学校の娘と映画のDVDを見ていても、「まだこの子には早いだろう」っていう性的な描写のシーンが出てきて「あー、ちょっと待ったー」なんてこともある(笑)。


川端さんのお話を聞いて、複雑に絡み合った問題の本質が少し見えてきたような気がする。都条例や表現規制の問題は、マンガ産業のいく末にも関わるので、これからもチャンスを見て取材を進めていきたいと思う。

川端裕人(かわばた・ひろと)
●1964年、兵庫県生まれ。95年、日本テレビの記者として南極海の捕鯨調査船に乗船した体験を元に書いた『クジラを捕って、考えた』でノンフィクション作家としてデビュー。98年、小説『夏のロケット』で第15回サントリーミステリー大賞を受賞。少年たちの川をめぐる物語『川の名前』、自身のPTA活動を元にしたノンフィクション『PTA再活用論 ──悩ましき現実を超えて』など、ジャンルを問わず多くの著作がある。

PTA再活用論―悩ましき現実を超えて


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