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特選 漫画人インタビュー

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インタビュー 2009/12/30
『ゲゲゲ世界戦略』(3) 米国編


【コンテンツ大国アメリカ編】

夏目:第2次大戦後に、アメリカンコミック界で自主規制コードが作られるなどの社会浄化運動で全部ついえてしまいましたが、実は、マンガ文化という点ではもっとも可能性があったのはアメリカなんです。当時の社会浄化運動がなければ、日本より先にバラエティー豊かなマンガ文化が生まれたんじゃないかと。もともと、米国には女性向けマンガやホラーマンガも存在しましたし。
自主規制コードによって潰えてしまいましたが、実際に水木さんもこの国に存在したホラーマンガに影響を受けているはずです。そういう意味で源流は遠くないんじゃないでしょうか。知りあいのアメリカ人研究者は、日本マンガの発展の原因はテレビアニメと仲が良かったということじゃないかと言います。さきほどのマンガブームとアニメブームの関係やサイクルにのっとって、テレビアニメとマンガが共同歩調をとって発展していけた。

――日本では結果的に、マンガのキャラクターマーチャンダイジングやアニメ化で漫画業界とアニメ業界が共同歩調をとれた、ということでしょうか?

そうです。アメリカではそれがなく、マンガがより早く新聞紙上の風刺マンガの形で発展し、マンガ・アニメはテレビではなく映画とともに隆盛を迎えた。そういう意味でアメリカはマンガとTVアニメが歴史的に共同歩調を取れなかったようです。アメリカの研究者は今でもそれを悔しがっているみたいです。

アメリカのテレビ文化と日本のテレビ文化は近いというか、日本がアメリカの影響を受けているという意味では日米の文化は意外と近いような気がしますね。ですから、水木作品もアメリカで受け入れられないというわけではないんじゃないかと思います。ただし、どの文化的チャネルから浸透させるかというのが問題ですね。これはかなり難しい問題ですから。

そのアメリカでは、少女マンガが浸透しつつあります。「アーチー・コミック」など男性が描いていたアメリカの少女漫画しか知らない読者が、日本の少女や女性たちが描く少女マンガにびっくりしたんです。自分たちが投影できる自分たちのメディアがあるということで、アメリカの女性読者たちにとっては眼からうろこ状態。

そもそも日本と東アジア以外ではマンガは男性主体のメディアで、女性が読むメディアではなかった。そんな状況の中に突如あらわれたのが、女性が語るべきことを語り女性が読むメディアである日本の「少女(女性)マンガ」でした。実は、これは日本にしかないメディアだったんです。

少女マンガがアメリカで浸透するという意味は、部数以上に大きな意味があります。そして不思議なことに、男性向けよりも女性向けマンガのほうが女性の自己表現欲、自分も描き始めたいという欲をなぜかかき立てるように見えます。少女マンガというメディアが持つ意味が日本と他国で違うんじゃないかと。

この新しいメディアが欧米でも受け入れられています。この現象は、アメリカではマンガが一過性のブームではなくて、真の意味で受け入れられて着実に根を張っているということを意味していると考えています。そして日本マンガの浸透はアメリカの流通形態をも変えてしまいました。
従来、コミック専門店という小さなチャネルにとじこめられていたコミックが、日本マンガによって一般の書店でも売られるようになった。これは従来の地位の低い一ジャンルとしてのコミックスではなく一般の出版文化としてのマンガが開拓されたことを意味します。この大きなマーケットの変化が起きた上で少女マンガが浸透していることは、想像以上に大きな可能性をもつと思いますね。


●課題は青年マンガが浸透するかどうか

残りの課題は多様性ですね。アメリカで多く読まれているのは、まだ『NARUTO』を初めとする少年マンガだけ。 青年マンガが受け入れられるのがいつかということが大事です。 日本では、60年代、70年代にかけて若者文化の革命があった。その革命が、世界的には若者はいつかマンガを卒業するものなのに日本の若者がマンガを卒業しないという社会的条件につながりました。

アメリカや世界で今後、そのような社会的条件が発生するかということでしょう。アメリカでは青年向けマンガ文化はかつてアンダーグラウンドに流れ、フランスではBDなどのアートに流れ、オルタナティブ化した。日本においては少年のものだったマンガが青年文化になる過程で水木作品があらわれました。 アメリカでもこの青年マンガが浸透したときに水木作品が受け入れられる時なんじゃないかなと思いますね。そして、これは今起きてもおかしくないことだといえます。

――グローバル=アメリカ市場だとすると、映画での成功同様に、東アジア諸国でハリウッドスタイルを研究して作られたマンガが日本より先にアメリカで成功する可能性についてはどう思われますか?

これまで、日本のマンガブームというのはいわゆる「ジャパンクール」というような雰囲気に支えられてきました。ジャパンクールというからには、いわゆるアメリカ的ではないもの、グローバルというか無国籍ではないものですよね。アメリカで受け入れられるようなマンガをつくり、これを流通させることはできると思います。たとえばジョン・ウーの映画がハリウッドでヒットしましたが、これは従来の香港でしか制作できないような香港アクション映画だとは言えません。香港アクションの成功ではなく、あくまでもハリウッド映画としての成功ですよね。

一方で、宮崎アニメをそのままの作品としてアメリカに持っていったら上映館を制限されました。これはいまの映画配給の仕組みからすると仕方がないことです。日本の作品をそのままの形で持っていってもメインカルチャーではなく、カウンターカルチャーの域を出ません。ただ、無理にメインカルチャー風に作っても、それを日本のマンガとは言えないでしょう。それだったらむしろ、カウンターカルチャーのままでいいんじゃないでしょうか?

日本らしさを保持したままでカウンターカルチャーのままでいるのか、日本らしさを失ってアメリカスタイルのマンガになるのかという選択。しかし、日本らしさを失ってしまった時に、はたしてそのマンガに商品価値があるのかという問題もあります。

――ハリウッドスタイルで作ってもそれは日本のマンガではなく、アメリカスタイルのマンガでしかないということですか。

そう。好みの問題ですが、その作品が持つ固有の味わい、日本にしかないようなマンガの魅力、鬼太郎の魅力をそのままの形で伝えられるような流通のやりかたを考えたいのなら、そのほうがよいでしょうね。








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