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インタビュー 2009/10/16
平成生まれ起業家が目指す「iPhone発世界」
iPhone専門コミックス出版社代表取締役 野口卓也さん


野口卓也

帯コミックユーザーが増えるとともにデジタルコミック配信を始めるネット関連企業も急増し、さまざまな作品がデジタルでも読めるようになりました。21世紀初頭の黎明期を経た現在の国内電子書籍市場規模は500億円前後と推定され、2010年代には国内市場が飽和を迎えると予測する声もあります。
そんな閉塞した国内市場を越えて作品を海外配信していく企業が増える中、自らの作品をiPhone経由で国内外読者に直接届けようとする若きクリエイターも増えてきています。

そこで今回は、世界初のiPhone専門コミックス・レーベル「MANGA SOURCE」を立ち上げ、iPhone画面で読むためのオリジナル作品の企画編集・配信を手掛けている株式会社ホットソースの代表取締役社長 野口卓也さんが登場。 
弱冠20歳の若き起業家である野口さんに、MANGAを英語翻訳して世界中のiPhoneユーザーに届ける試みにチャレンジした理由や今後の可能性と課題についてお話を伺いました。


プロフィール  野口卓也

1989年東京生まれ。高校時代から小説家として活動。慶応義塾大学入学後3ヶ月で中退した後、2009年2月にWEB制作会社、株式会社ホットソースを20歳で起業。
2009年7月よりiPhone専門出版社としてデジタルコミック配信事業“MANGA SOURCE”事業を開始する。
企業URL http://www.hotsource.jp/index.html


●MANGAはすでにiPhoneから世界に広がっている


―野口さんは若干20歳だそうですね。若くしてiPhone専門出版社を作ろうと思ったきっかけを教えてください。

もともと熱心なAppleユーザーだったわけではないのですが、世界にコンテンツを配信するプラットフォームとしてiPhoneほどふさわしいチャネルはないと思ったことがきっかけです。iPhoneで本格的にオリジナルコミックを配信している会社はまだなかったので、これは早い者勝ちだぞ(笑)と会社を立ち上げてすぐにiPhoneでの配信準備を始めました。

―出版社に入社してそこで漫画を作って売っていくという選択肢は念頭になかったのでしょうか?

なかったですね。もともと小説家として雑誌『ROCKS』や企業のウェブサイトに連載を持っていたので出版界の事情がある程度わかっていて、本腰を入れてデジタル配信している出版社はほとんどないことを知りました。大学を中退してWEB制作会社を起業して後に間接的にiPhoneの情報が入ってくるようになると、デジタルコンテンツのプラットフォームとしても優れていることがわかった。iPhoneはすでに世界中に4000万人以上のユーザーを抱えているし、ユーザー層も知的で購買意欲が高い。そう判断して、自分でいち早くiPhone専用出版社を作って配信を始めてしまおうと思ったわけです。

―学生時代に小説を書かれていたそうですが、なぜ小説ではなく漫画に絞ってデジタル配信しようと思ったんですか?

小説には創作者としてのこだわりが出すぎてしまうんです。漫画は読者としてかなり読み込んでいましたので、より売れるかどうかの判断に自信があったことが理由の一つです。それと、文字よりもビジュアルでわかりやすい漫画の方が世界中のユーザーに受け入られやすいだろうと。

―ケータイコミックもふつうに読んでいましたか?

いえ。ケータイコミックはアダルト作品が多くて特殊なジャンルという印象でしたから、読んだことはなかったですね。周囲でも、読んでいてもそれを公言する友人はいなかったですし。

―学生時代に影響を受けた漫画を教えてください。

『寄生獣』『デビルマン』『火の鳥』といった作品ですね。

―昭和の名作ですね。iPhoneでもそういった壮大な世界観を持つオリジナル作品を配信していく予定ですか?

いえ。個人的にはそういった作品が好きなんですが、世界中の読者により受け入れられやすいのは、『ドラゴン・ボール』や『ワンピース』のようなバトルファンタジー物だと考えています。

―現在、iPhoneで配信している作品の販売状況はいかがですか?

現在は、文学作品のコミカライズ“Bungaku”シリーズとして『羅生門』の漫画版など20作品を配信していますが、1作品につき数百ダウンロードといった状況です。そんなにすぐ儲かるものではありません(笑)。配信を初めてわかったことですが、店頭販売のように特定の作品が瞬間的に売れるのではなくどれもコンスタントに売れていくロングテール型だということです。

もうひとつの特徴は、購入読者の割合が国内読者7割、海外読者3割ということ。特に海外ユーザー向けプロモーションを実施しているわけではないのですが、日本の漫画を買う海外のiPhoneユーザーが既に一定数いることがわかりました。それと、海外では単純に表紙がかっこいい作品が売れやすい。将来的には、オリジナル作品を大量に翻訳配信していくことで現在の購入読者比率を逆転させて、海外9割国内1割ぐらいにもっていきたいと考えています。

―iPhoneを振るだけで吹き出しが日本語から英語に切り替わる点が使いやすそうですね。

えぇ。従来のデジタルコミックビューワは操作が面倒な印象があったので、使いやすさにはこだわりました。それと読む際に画像が重くならないようにデータ制作にも細かい注意を払っています。

左:iTunes購入ページ 右:英語翻訳表示時


―作品の企画編集から自社で行っているそうですね。

デジタルコミックは、既に出版された作品を配信するスタイルが一般的ですが、当社は新人の漫画家さんを発掘し、漫画の企画を立てることで、iPhoneオリジナルの作品だけを配信していきます。現在、僕と編集者の2人で40人ほどの漫画家さんといっしょに漫画制作を進行しています。

―たった2人の漫画編集部体制ということで大変じゃないですか?

大変といえば大変ですが、早い時期から多くの漫画家さんに、iPhone画面で読みやすい漫画の描き方に慣れていただきたいなと思って頑張っています。1ページにつき2コマから5コマで抑えた100ページの作品を15分ぐらいで読めると快適で満足感もある。そのための作画・編集ノウハウをいっしょに蓄積していきたいと考えています。


●ローコスト大量生産モデルで作品を日本に逆輸入していきたい

―参入障壁が低いコミック市場への新規参入企業が急増したため、近いうちに低価格競争が始まりそうです。御社なりの戦略を教えてください。

1作品あたりの制作費を1年ぐらいで回収していくようなローコストモデルで、オリジナル作品を量産していくことです。漫画は数百作品作ってそのうちの1作品が大きく当たればいいというビジネスですから。制作ノウハウと同時に海外への販促ノウハウも取得し、このモデルを確立させることで、この分野のトップシェアを獲得していきたいと考えています。

―オリジナル作品を量産するためにデジタルコミック雑誌を創刊する可能性はありますか?

いえ。ユーザーにとっては作品単体の魅力がすべてなので、わざわざコストをかけて雑誌を作る必要はないでしょう。作品作りそのものに力を注いでいく予定です。

―現状の課題としてはどういったものがありますか?

AppStoreでの作品審査に時間がかかりすぎて配信が遅れることです(笑)。

―読書専用端末を含めたiPhone以外の端末への配信も検討されていますか?

ユーザーが読書専用端末を求めているかどうかわかりませんが、モバイル配信については可能性大です。
iPhoneでトップシェアを獲得できたら、MANGA SOURCEをiPhone以外のモバイル全キャリアにも対応させ、国内にも広めてゆく予定です。ですから、MANGA SOURCE としてはiPhoneとモバイルを分けて考えていません。オリジナル作品を海外から日本に逆輸入的に展開していくうえでどちらも重要なチャネルだと捉えています。

―そのためにはじめから全作品を英語翻訳していると?

ええ。日本でそんなに売れなくても海外では売れる作品が出てくるでしょう。海外で先に売れてしまえば、日本で単行本化されてない作品を紙の本にして出版することも考えています。コストを考えても、これからは紙から電子ではなくて電子から紙という流れが一般化していくはずですから。

―人気漫画家の書き下ろし作品を先行独占配信予定だそうですね。

09年12月に、江川達也先生の書き下ろし漫画作品『真幸くあらば』を配信します。これは2010年1月から劇場公開予定の同名映画「真幸くあらば」の公式コミカライズです。有名な映画製作者の奥山和由さんとのご縁で、起業後1年足らずでこのような話題作のコミカライズを担当することができてとても嬉しく思っています。

劇場版「真幸くあらば」


―出版界を経由せず自ら作品配信を始める人がどんどん増えていきそうですが、デジタルコミックを仕事にしていきたい若者たちへのメッセージをお願いします。

自ら起業したりサービスを立ち上げる人はどんどん増えていくと思いますが、ただ「作品をデジタルメディア化する」だけの事業なら誰にでもできます。自分なりの強みを一つは持っていた方がよいでしょう。僕も創作や編集経験、WEB制作事業を生かせるサービスだったのでMANGA SOURCE事業をスタートさせました。
それと、デジタルコミックを扱っている人の一部はクリエイターである漫画家に対しての敬意を忘れがちな傾向もあるので、この点は気をつけるべきでしょう。パートナーである漫画家との関係性はないがしろにするべきではないと思っています。


▼野口卓也さんのイチオシ作品


デビルマン (1)
『デビルマン (1)』
永井 豪 各420円(税込)

地球の先住民族、デーモン族の存在を知ってしまった不動明と飛鳥了はデーモン族の侵略に対抗するために、悪魔と合体しようとするが…
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