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特選 漫画人インタビュー

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インタビュー 2009/08/21
麻生太郎がマンガ界に遺したもの
東京大学教授 浜野保樹さん(1)


生太郎政権が末期を迎えつつある昨今、無類のマンガ好きの麻生首相が外務大臣時代に鳴り物入りで設立した『国際漫画賞』も麻生政権とともに消えていくのでしょうか?
そこで今回は、コンテンツ産業に関する研究開発の第一人者で、『国際漫画賞』実行委員として同賞創設に深く関わった浜野保樹東京大学教授へのインタビューを掲載。
浜野保樹

浜野教授は約20年前の1988年に上梓した著書『ハイパーメディア・ギャラクシー―コンピューターの次にくるもの』にて現在のネット社会の到来を予見していました。
当連載では主にマンガ業界の方々にインタビューをしてきましたが、今回は、マンガ界の外部からの視点ということで、海外交流審議会ポップカルチャー専門部会部会長として国内外のコンテンツ市場動向に精通されている浜野教授に登場いただき、国内コンテンツ産業振興の観点からみたマンガ産業の課題についてお話を伺いました。

プロフィール 浜野保樹
東京大学大学院新領域創成科学研究科教授。工学博士。
1951(昭和26)年生まれ。コンテンツ産業や制作に関する研究開発に従事する。最近の主な著書として、『模倣される日本』(祥伝社)『表現のビジネス』(東京大学出版会)『メディアの世紀』(岩波書店)などがある。財団法人黒澤明文化振興財団理事、財団法人徳間記念アニメーション文化財団評議員、社団法人日本料理研究会顧問、海外交流審議会ポップカルチャー専門部会部会長、文化庁メディア芸術祭運営委員など。
近著に『偽りの民主主義 GHQ・映画・歌舞伎の戦後秘史』(角川グループパブリッシング刊)


●国際漫画賞創設の舞台裏

―コンテンツ振興に関わる省庁としては「JAPANコンテンツフェスティバル」を主催する経済産業省や「メディア芸術祭」を主催する文化庁などが知られていますが、国際漫画賞はなぜ外務省主催なのでしょうか?

経産省はコンテンツ輸出などの経済面の担当ですし、文化庁は著作権やコンテンツの内容について担当していますが、海外への日本文化の総合的な発信という点からすると、外務省が担当するものだと思います。
そして国際漫画賞設立は省庁や業界団体からの働きかけからではなく大臣自らが音頭を取られたものです。日本の表現手段が世界に受け入れられたという点でマンガは日本の宝ですから、国としてのきちんとした姿勢を示してくれたことは意義深いことだったと思います。
今後は、フランクフルトなどの世界的なブックフェアでの告知や、各国の大使館を通じてより周知を徹底して、日本発のマンガイベントとしてしっかりと海外に告知していきたいですね。

―日本には出版界の監督官庁がないですよね。情報交流の課題点として、海外の出版社やマンガ家からみると日本サイドの相談窓口がわかりにくいと思われています。今後、マンガの対外窓口省庁は外務省になっていくのでしょうか? 

いや、それは切り口次第でしょう。これまで国内の漫画出版は経済的にしっかり自立していたため、国内側としては出版社などの民間側が窓口となって海外の大手出版社との対応はできていたのでしょうが、海外で日本の漫画人気が高まるにつれ、海外の小さな組織も関心を持つようになると、そういったところが日本の事情も分からず、日本の出版社を1社1社調べて訪ねるのはかなり面倒だし、不可能だという声は出てくるでしょうね。
これからは私企業だけでなく、関連団体などの公的機関の充実と対応が必要になるでしょう。

―国境を越えて流通するデジタルマンガも同様ですか?

えぇ。これはかなり期待しています。というのも、デジタルコンテンツについてはいろいろと新しい試みをやったのですが、まず長尺物は今のところ難しい。90分や2時間前後の長い映像を有料でネットユーザーに見せるというモデルはまだビジネスになっていない。
そういう意味ではマンガ、特に通勤時間で読めて自分のリズムで読み進むこともできるケータイコミックのビジネスモデルは有効だと思います。自分のスピード・自分のリズムでというのはインタラクディブメディアが持つ最大の魅力、双方向性のメリットですから。
しかし、本当にブレイクするのは、紙で出版された古い作品をデジタル上で読むという今のモデルではなく、ケータイやネットという独自のメディアで読む新しい演出方法が生まれた後でしょうね。ケータイが生んだ決定的な視覚的なコンテンツというものはまだ無いです。
現在のマンガとアニメの中間のような動きのある新しいマンガ演出が必要。アニメで話題になった、新海誠さんの『ほしのこえ』は「動くマンガ」というような感じですよね。かつての手塚治虫作品や24年組による少女マンガもそうでしたが、革命的な新しい演出方法が出てくれば、新しい読者や大きなマーケットが生まれ、フォーマット等の技術革新もそれについてくると思います。
かつての映画界もしかり、そのメディアならではの演出方法が出てくればいろんなことが変化しますから。

―映像コンテンツ制作研究の専門家の視点からみた、制作面での課題は?

デジタルマンガの制作に関して言えば、スペックやフォーマットが統一されないと難しいでしょう。スペックが一つに決まっていないと作家としても表現も難しい。iPhoneが携帯電話として、携帯型ゲームと同等の比較的大きなディスプレイを使っていますが、ディスプレイについてはあのくらいの大きさは欲しいですね。
また、多くのマンガ名作は、天才的マンガ家と優れた編集者によって生み出されてきました。マンガの将来的には、従来のマンガ家と編集者に加えて映画監督のような全体をみる演出家のような存在が必要になってくるかもしれません。マンガ制作においても映画・アニメの製作過程に似たフローが出てくれば、今とは異なる演出方法が出てくるんじゃないでしょうか。

―流通を制するものが市場を制すという先生の持論からみた流通面の課題は?

流通は大切です。これまでマンガ界は大手の出版社のマンガ編集者によって支えられてきましたよね。
ただ、どんな世界でも既存の仕組みや商慣行を変えるのは骨が折れますし、歴史的経緯を無視することもできません。
古いものを無理矢理変えるために消耗するより、ネットを生かした新しい制作・流通モデルを一から作り上げられる人材を育てた方が早いんじゃないでしょうか。

―育成すべきはビジネスモデルを構築できる人材ですか?

そうですね。コンテンツビジネスというのはすごく難しい。アニメ界の課題も同じです。ビジネス面で有能なプロデューサーだけ育てても、良い作品が生まれないことには本当の意味ではユーザーに支持されない。突出した作品を生み出せるクリエイターと国内外全体を見渡せるプロデューサーの存在が両方必要でしょう。




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