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特選 漫画人インタビュー

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インタビュー 2009/07/25
日本のマンガは中国・韓国に追い抜かれるか
京都国際マンガミュージアム研究センター長 牧野圭一さん(2)


牧野圭一さん


●日本よりアジアのマンガ教育の方が充実している

――牧野先生は京都に世界初のマンガ学部を創設されたわけですが、マンガ学部の生徒の13%前後はアジアを中心とした海外からの留学生だそうですね。特に韓国や中国などから優秀なマンガエリートがはるばる京都まで学びに来るとのこと。日本のマンガ教育はアジアでも突出したレベルにあるということでしょうか?

実はいま、韓国の国内だけでも400校以上の大学、専門学校にマンガコースがあります。韓国や中国の学校には日本よりよっぽど立派な設備があるというのが現実です。
数年前ですが、韓国のアニメ専門高校学校校長から「うちの高校生に日本のマンガ、京都精華大学にについて詳しく話してくれ」という依頼を受けたことがあります。
私が全校生を前に『もうすでに韓国の学校では、国家の支援を受けることで日本よりはるかに良い環境・設備があって、充実しています。先生も立派な方々が揃っており、企業の参画もある。わざわざ日本に来る必要がないのではありませんか?』と話しました。
すると彼らは、「日本にはマンガの空気がある。その空気の中で学びたい」と答えます。
精華大学にマンガ学部があるからという理由だけで日本に来るんじゃない。マンガの空気を感じるのにもっとも相応しいのが、たまたま京都精華大学なんだということなんですね。

いま日本のいろんな大学に、学校側の生き残り戦略として、アジアの留学生の受け皿として、マンガコースを整備しよう、ビッグネームの先生を用意して集客しようという動きが増えつつあります。しかし、教師にとってビッグネームであっても、今の学生からみるとそれは過去の作家なんですね。学生が求める先生は学校側がまず知らないような最近のマンガ家です。

――マンガ学校としてはどのような先生が理想なんでしょうか?

マンガ学部の先生としての条件は、日本という国にマンガの空気がある。それが学生にとって何よりの魅力であるのだということをまず認め、それを前提に学生を指導するタイプの先生です。マスコミや学生の父兄を含め、ビッグネームの先生を求める傾向はたしかにあります。そしてそれはそれで間違いではありません。才能あってこその作家でありますから。ただ、第一の条件はマンガの空気を伝えてくれる先生ですね。

――しかし、子供の将来=就職への教育投資として大学を考える、一般の親御さんからするとマンガ界に確実にこどもを送り込みたいというニーズも切実な気がします。こどもにいい就職をさせたいという韓国や中国の教育熱の高さは日本の比ではないと聞きます。マンガ教育についてもそうだとすると、日本の学校もうかうかしてられないんじゃないでしょうか?

語学、たとえば英語に例えると、英語を教える先生がいくら沢山いても、文法を理解し、英語を話せる学生がいなければ英語文化は育ちません。日本でのマンガ文化は国や学校が主導したものではなく、広範な読者が自分たちで勝手に学び、その力で「作家」を育てたことで豊かになったものです。いわば、マンガは現代の日本人の共通言語なんです。

牧野圭一さん


●マンガ読者の共通言語はマンガ

――言語で例えると、日本語のようなものですね。

約5,000万人ともいわれる日本のマンガ読者による共通言語がマンガなんですね。
日本の誇る高いレベルの「読者」に支えられて、たくさんのマンガ家が生まれてきました。少女マンガのケースでいうと、昔、少女マンガ家になるには19才前にデビューしなければダメだと言われていました。社会人として完成されたマンガ家が必要なわけではなくて、若いマンガ読者の代弁者として読者の等身大の空気を伝えることの出来る年代が19才までとみなされていたんですね。文学性や絵の完成度という点だけで判断すると、低いレベルであったものかもしれません。ただし、読者の空気・気運を伝えるというにふさわしい作家像。
彼女たちこそが、これまでに無かった表現による、新しい物語を伝えうる「視覚伝達の文化」を作ったのです。
そういう視点に立つと、中国や韓国でいくら国策としてマンガが強化されようと、文化として自国の読者に根付くかという、大きな課題があるのです。一夕一朝にはできません。
長い長い時を経て、中国のマンガや韓国のマンガが生まれるかどうか。
日本語ですでに成立しているものを自国語に翻訳し、翻訳された言語で読むという作業が必要になります。そういう意味で、私の眼からみると険しい道のりです。



 

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