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特選 漫画人インタビュー

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インタビュー 2009/05/06
元週刊少年ジャンプ編集長が贈る、大人になったジャンプチルドレンへのメッセージ


インタビュイー:元週刊少年ジャンプ編集長 堀江信彦氏(現コアミックス代表取締役社長)
<2007年7月取材分>

●努力・友情・勝利はいつの世も不変

――ケータイといえば、モバゲータウンの隆盛が象徴的ですが、10代ユーザーのコミュニケーションアイテム化してますよね。ケータイコミックユーザーも10代読者が非常に多く、従来のマンガを読んでいた層のニーズや売れ筋とはかなり変わってきています。
かつてのジャンプ黄金期の10代読者と最近の10代読者を比較して何か変わったなぁと思う点はありますか?


僕は、少年たちとずっといっしょに仕事をしてきてつくづく思うのは、本質は変わらないということ。子供はいつだって生き方の情報を欲しがってる。そして、面白いことがいつだって大好き。
大人にとって子供がわからなくなるのは、子供がいる場所がわからないからですよ。
いままでいると思ってたマンガや雑誌の場所に今の子供はいない。
それは子供の遊び方が変わっただけ。どこで遊んでいるか、彼の居場所がわかればかれらの求めるものがはっきりわかる。今、子供たちはケータイの中にいるんですよ。

――確かに、モバゲータウンの中にはかなりいますね(笑)。

そう。そんな行きつけの場所にいる子供たちへ、しっかり面白いものを届けてあげればいいんですよ。

――かつてのジャンプが掲げていた「友情・努力・勝利」へのニーズという点でも同じなのでしょうか?

そうだね。友情という点では、むしろ今はコミュニケーションツールが多くなってきてるから、当時よりも今の子供たちの方が求めてるんじゃないかな。

――ゆとり教育で以前ほど努力や競争をしなくてもいい環境に変わってきたという点で、努力や勝利のニーズが低くなってるという調査報道もありますが。

10代など若いときほど自分の将来に対して希望を持っています。そんな子供が成長するにつれ、現実が見えてきて将来に悲観的になってきたりする傾向があります。
でも、生まれてから棺おけに入るまで、世の中の2/3の人は将来が良くなると思っている人たちですよ。
どちらかというと、将来が良くなると思っている人を読者にしたほうがいいっていうのが僕たちの考え。将来がどうなってもいいやっていう人を対象にしたマンガは作れないなぁって。
自分の将来がよくなると思っている多くの子供は、やはりがんばっている人、目標に向かって努力している人に共感する。努力して勝利する主人公が子供たちのヒーローなんですね。
そうした意味ではジャンプ的キーワードに対するニーズは昔も今も変わらないと思いますよ。


●ケンシロウはロスジェネ世代の悲哀を背負うヒーロー

――95年にジャンプは653万部という驚異的な部数を記録しました。あのジャンプ黄金期当時に読者だった子供たち、将来がきっと良くなると思っていた子供たちは、あれから10年以上たったいま、ロストジェネレーションとか貧乏くじ世代とも呼ばれています。
俗にいう「失われた10年」を経て、この世代ではフリーターやニートになって社会を漂流しているひともけっこういます。
そんな団塊Jr世代について、団塊Jr世代のカリスマ誌の元編集長として何か思うことはありますか?


そうだね。確かに当時のジャンプは彼らとともにあった。
団塊Jr世代は、社会的には貧乏くじをひいてしまって現実というか先が見えてしまうようなところがあるよね。不況というか時流に否応無しに世代ごと巻き込まれてしまったというか…。
そんな団塊Jrが共感するヒーローっていうのは巻きこまれ型ヒーローなんだよ。映画でいうと、ダイハードとかね。

――インディ・ジョーンズやハン・ソロ、『マトリックス』のネオもそうですね。

そう。実はケンシロウも巻き込まれ型ヒーローなんです。彼は、自分の意思ではなく北斗神拳の伝承者となって、始めはすごくいろいろ悩み葛藤します。最初から強かったわけではないし、長男でもない。

――そもそも末っ子ですもんね。そんなケンシロウが北斗神拳の伝承者という宿命から逃げずに、数々の強敵たちと戦う過程で強くなりヒーローとなっていく姿に、子供時代の僕たちは激しく共感しました。

北斗の拳を世代論で例えると、ラオウは強圧的というかおしつけがましい団塊世代。
トキはその下で比較的自由にしている新人類世代。
ケンシロウは、上の世代の後始末というか責任を押し付けられて巻き込まれている団塊Jr世代のイメージだね。
ケンシロウは、まさしく団塊Jrの子供たちの気持ちを代弁するようなヒーローだったんだよね。

――堀江さんご自身はキャラクターでいうと、誰の性格に似ているんでしょうか?

そうですねぇ。表向きはラオウかな。でも本質的にはケンシロウだね(笑)。
あとは、世代で言うと、僕は団塊世代と新人類世代の中間にあたる世代なんですね。
ちょうど二十歳の時に「ポパイ」が創刊されて夢中になって読んだんだ。
当時の「ポパイ」が提示した、みんなで楽しく明るくなんていうカリフォルニア文化に影響されたよね。サーファーファッションが流行してたから、サーファーでもないのにそういう格好もしてたよ(笑)。

堀江信彦

――今で言う、陸(おか)サーファーですか。それはあまりケンシロウらしくないですね(笑)。

あと、僕らの世代は、無気力・無関心・無責任の「三無主義」なんて上の世代からは言われていた。
その後、社会人になって働き盛りのときにバブルを迎えたんだけど、僕個人としては、バブルは経験していないんですよ。狭い編集部の一室で、朝から夜中まで原稿の山にうずもれてずっとマンガの仕事をしていたから「バブルなんてどこにあるの?」という感じだったね。

――最後に、黄金期のジャンプを読んで育ったジャンプチルドレンたちにメッセージをお願いします。

団塊Jrという名前がついているけど、いつのまにか次の世代におじさん呼ばわりされないように注意してね、ということかな(笑)。
上の世代に対して不満があったりしても、いつのまにか自分が上の世代に言われてた小言を下の世代に言ってたりするからね。

――あっ、それはもうかなり頻繁に言ってますね。ケンシロウからいつの間にかラオウのようになりつつあります(笑)。

そうだよね。あとは10歳上と10歳下の友人を持つことが大切。
10歳上とは仕事を通じて友人になれたりするけど、意外と下の世代とは難しいんだよね。
僕は、幸い10歳下のプライベートな友人ができてすごく勉強になった。
他の世代を知ることで自分の世代のことが理解できたり相対化できて、自分の世代の居場所がわかった。
あとはいろんな人とお酒をいっぱい飲むことが大事だね(笑)。


天の覇王 北斗の拳 ラオウ外伝
『天の覇王 北斗の拳 ラオウ外伝』
原案:原哲夫・武論尊 作画:長田悠幸 420円(税込)

姿の見えぬ敵…。リュウガを襲った謎の村に、策士ソウガが潜入。拳王軍の周囲で蠢く不穏を操るのは!? 恐るべき黒幕が、拳王の前にその姿を現す! そしてカサンドラの危局は訪れ、若きラオウの伝説は遂に最終局面を迎える――――!!
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