毎日更新!!漫画大目録

世界最大の電子書籍大目録

電子書籍販売点数39916点

漫画網羅特選

漫画網羅特選
最近のレビュー一覧 アクセス数ベスト10
前へ

連載目次へ
 
レビュー 2010/01/06
第36回 寡作の天才は読者をどこへ導くのか――鶴田謙二の単行本に想う
Spirit of Wonder
『Spirit of Wonder』
鶴田 謙二 420円(税込)



マンガ――ここではその言葉の意味を日本発の日本国内におけるエンターテイメントのことと限定するとします――は言い尽くせないほどにたくさんの“お約束”のもとに成り立っているメディアです。それは表現手段としても、ビジネスにおける商品としてもです。表現手段としてのお約束に関しては、今までこの連載でも何度か書いてきました。しかし商品としてのマンガのお約束のことはあまり触れないできてしまいました。ここで書いてもあまり面白いことではないですから。

そんな商品としてのマンガのお約束をひとつあげてみますと、まあいわれてみれば当たり前のことなんですが「薄利多売」「大量生産‐高速消費」という点がまずありきです。誤解して欲しくないのですが、これは何もたくさん作品を描いている作家さんが偉い、というようなことを意味しているのではありません。何分、マンガはある程度の量があってもすぐに読み終わってしまう、良く言えば読みやすい、悪くいえばその程度の肩肘の張らない娯楽として認識されているものですからね。

今現在、漫画雑誌の市場では前にも増して猛烈な量のマンガが生産され、販売されています。その全てを読破するのは普通に考えるとまず無理でしょう。それほどのマンガの洪水の中で、あなたが実際読まれている作品はどれくらいありますか? また、どんなところで読むものを選別しているでしょうか。

寡作の作家、という存在は特にこの漫画と言う業界では存在しにくいものです。なぜなら雑誌上での連載→単行本化して利益を出す、という構造についていけないから寡作なのであり、それはつまり日々の糧が手に入らない、食べていけないということに直結してしまうからです。これも当たり前の話ですね。いわゆる一発屋と称される方もいるにはいますが、1作品だけでずーっと食べていけるなどということ(つまりミラクルヒット作です)は宝くじをあてるより困難。どの世界でもそんなにおいしい話は無いわけです。


そんななかで、“寡作の大人気作家”という矛盾した存在としての立ち居地を確立している稀有な人がいます。鶴田謙二。この人の人気は絶大といっても良く、とくに目立つのは同業者や業界内部の人たち、またファンジンを作ったりネット上で情報発信する人たちというような、情報中心部にいる人々によって愛されています(もちろんそうでないファンの方もたくさんいるでしょう)。

鶴田謙二が生み出した作品総数は少なくても、それを評価する声はとてつもなく大きい。それだけ鶴田謙二というクリエイターのポテンシャルがでかいということなのでしょう。

一昔前であれば時代の隙間に埋もれてしまったかもしれない寡作の天才。今、そういう方々が大きく存在できるのは、マンガ産業の隆盛と、徹底的に細分化された趣味嗜好が成り立つ情報化社会の恩恵なのかもしれません。

もちろんそこに鶴田謙二の実力があってのことなのですが。



Spirit of Wonder
『Spirit of Wonder』
鶴田 謙二 420円(税込)

発明家って生きものは、どいつもこいつも変人でロマンチストだ。瞬間移動できる機械だったり月に行ける装置だったりタイムマシーンだったり、常人には理解しがたいことを日々真剣に考えているのだから……。――そんな愛すべき変人たちに魅せられてしまった人々の、ちょっぴり切なくて心温まる物語。
レビュー関連目録 鶴田謙二

ページのトップへ

次へ 前へ
連載目次へ

このサイトは、インターネットエクスプローラー(Microsoft Internet Explorer) Ver.5.5 SP2以上でご覧ください。

ebookjapan