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レビュー 2010/01/09
第39回 【最終回】 究極の一冊決めはやはりこの作品…「あしたのジョー」
あしたのジョー
『あしたのジョー』
原作:高森 朝雄 画:ちば てつや 各315円(税込)



この連載も今回で最終回となります。今までに多くの作品を「特選」と称して皆さんにおススメしてきましたが、最後である今回、特選中の特選作品として取り上げるのはこの作品を除いて他にないでしょう。

原作:高森朝雄・漫画:ちばてつや『あしたのジョー』です。

原作の高森氏=梶原一騎に関しては以前この連載でも取り上げました。しかし、巨匠・ちばてつやをついぞ取り上げることの無いままここまできてしまいました。ちばてつやというこの偉大な作家は、ある意味不思議な作家です。押しも押されぬ大作家としての名は知れ渡っていますが、これといって伝説的な逸話やエピソードをたくさんもっているわけで無し、漫画の歴史的にエポックを生み出したということもありません。

その割には現在活躍中の中堅・大御所漫画家やアニメ、映画監督などのクリエイターの方々が挙げる「影響を受けた作家」「一番好きな作家」にはいつもそのランキングのトップ付近に名を連ねます。ちばてつやは、作品性・作家性で愛されるという、作家の鏡のような方なのですね。神様といえば手塚治虫なのですが、手塚は近寄りがたいほど神々しい才能の塊みたいな人でした。言ってみれば、ちばてつやは頼りになるしやさしいけどなかなか乗り越えることのできない偉大な父親みたいな存在なのかもしれません(クリエイターにとって)。


さて、そんなちばてつやの代表作『あしたのジョー』。その内容はあまりにも有名なためここでの詳細の説明は省きますが、この作品がどうして最も素晴らしい作品といえるのでしょうか。何度もこのメルマガで引き合いに出した漫画の三大構成要素、「ストーリー、キャラクター、世界観」、この要素が黄金比の如く高次元のバランスで完成されているのはもちろんです。

人間の機微を描くことにかけては右に出るものはいないちばてつやが作り上げた「ジョー」という不滅のキャラクター。漫画原作者として一時代を築いた梶原一騎の最高傑作といえるシナリオ。そしてヒューマニズムとユーモアに溢れた「ちばてつや的世界観」をベースに、ニヒリズムを大きく注入した、悩める若者の青春像を追いかけた高度に文学性を持った世界観。

これだけもうならされるのですが、「ジョー」が突き抜けて素晴らしい作品となったのは、ちばてつや・梶原一騎という二つの天才的クリエイターが一つの作品を挟んでお互い精魂をぶつけ合って作り上げた、科学融合的昇華がそこにあったからなのです。

また、超大作にありがちな「最終回の尻すぼみ的残念感」もまったくありません。いやそれどころか、もっとも有名かつ印象的な最終回を擁する漫画といったほうがいいくらいです。そしてさらにプラスアルファの要素として、時代の雰囲気が、「ジョー」的世界観・「ジョー」的生き様を求めていたということが大きく幸いしていたことも見過ごせません。有名な「力石徹の葬儀」やよど号ハイジャック犯の「われわれはあしたのジョーである」という声明など、センセーショナルな扱われ方もしたこの作品は、多分に時代的な部分があります。その上で、古びない、時代による風化を受けない永遠性をも持ち合わせているのです。

この凄さは筆舌につくしがたい。正直、今後「ジョー」を越える作品は生み出されることがあるのか、筆者は疑問です。

が、漫画の可能性は絶えたとはまったく思いません。今後生まれてくるであろうまだ見ぬ傑作を期待していようではありませんか。

読者の皆様、お付き合い頂きありがとうございました。



あしたのジョー
『あしたのジョー』
原作:高森 朝雄 画:ちば てつや 各315円(税込)

荒れ狂う怪物・ハリマオを血祭りにあげ、残るは世界王座――。ついにジョーVS世界チャンピオン、ホセ・メンドーサ、世紀の一戦が行われることになった! しかし、この時、ジョーの体は数々の激戦によって危険なパンチドランカー症状にむしばまれていた。葉子は試合を中止させようと、ジョーに必死の勧告をしたが、この試合に命を賭けるジョーは、決然とリングに臨むのだった…!!
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